研究課題
本研究の目的は、帰宅困難地域に指定され長期避難生活を続ける住民を対象に、東日本大震災約5年間経過した時点でのレジリエンス、およびその規定要因を明らかにすることであった。研究3年目にあたる平成29年度は被災した体験の中から立ち上がり、被災後5年の歩みを通じて回復過程を歩む被災者のレジリエンスの特性的な面について、定量的調査結果と定性的調査結果をミックスド・メソッド法にて分析を行い、収斂した。定量的調査の結果、被災住民のレジリエンス得点は一般住民に比して低い傾向にあった。多重ロジスティック回帰分析の結果、目標をもつことで1.77倍、自分を受け入れることで2.07倍、くよくよしないことで2.03倍、資源や情報の入手をすることで1.5倍、笑うことで1.4倍と、これらが有意にレジリエンス得点と関連していた。定性的調査の結果から、再起する段階で発揮されたレジリエンスは【愛のある人間性】【平等性】【物事を達成しようとする強い意思】【謙虚に自制する力】【人間関係形成力】【知恵と知識の基づく問題対処力】【俯瞰的に見る力】の7分類であった。両方の調査結果によって、帰宅困難区域に指定され長期避難生活を送る住民の被災者にとって被災後5年目はレジリエンス得点が一般住民より低く、未だ回復の途上であることが推察できた。量的質的結果を収れんした結果、目標や展望を持つこと、自分を受けいれて次なる行動に動き出すことによってその活動から自分も支えられること、助け合うことや支えあう場を作ること、自分と他者の現状を受け入れて現状打開に向けてリーダーシップを発揮することが、地域で互いに回復を支えあうために重要であった。これら被災者のレジリエンスの特性を踏まえた人材育成を今後行うことが災害から立ち直る過程にあるコミュニティの人々の再生において有用であることが示唆された。
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Archives of Psychiatric Nursing
巻: 32 ページ: 103~111
https://doi.org/10.1016/j.apnu.2017.10.005