研究実績の概要 |
日本では子どもの貧困が問題となっており、成人期うつ病の原因として幼児期の家庭 崩壊や低経済状態が考えられる。自殺の主因である抑うつが増加する思春期に適切な支援を行う必要がある。本研究の目的の1つは、ソーシャルサポートの抑うつ緩和効果を縦断研究で検証し因果の向きを確定する。2つ目の目的は、保護者から生徒の乳幼児期の家庭の状況や経済状態と地域のソーシャルキャピタルを把握し、中学生の抑うつとの関連を後向き研究で明らかにすることである。 社会経済的要因と思春期の抑うつとの関係における性の相互作用について検討を行った。男子で、等価所得のZ値は抑うつと有意な負の関連があった(OR = 0.68, 95%CI 0.50 - 0.91)。思春期の精神保健には、子どもの貧困対策が必要である。 中学生のDMF歯数に影響を及ぼす社会経済的要因の検討を行った。男女共に、母親の教育歴とDMF歯数と処置歯数に有意な関連があり、低学歴ほど保有割合が高かった。男子で、母親の教育歴と未処置齲歯数、喪失歯数に有意な関連があり、低学歴ほど保有割合が高かった。男女共、経済状況と未処置齲歯数、喪失歯数、処置歯数、DMF歯数には関連がみられなかった。母親の教育歴は中学生の歯の健康に関連するため、母親に対して子どもの人生のより早い段階での歯科保健の啓発の必要性が示唆された。 子育てと介護を同時に行うダブルケアと抑うつの関連について検討を行った。介護保険の利用者は、利用していない者に比べ気分障害と不安障害が有意に低かった(OR = 0.25, 95%CI 0.07-0.93)。介護保険の使用がダブルケアの利用が精神的な健康障害を緩和する可能性が示唆された。ダブルケアというハイリスクグループへの介護保険の利用を促進する必要がある。
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