研究課題/領域番号 |
15K11891
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
瀧尻 明子 島根大学, 医学部, 講師 (70382249)
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研究分担者 |
松葉 祥一 神戸市看護大学, 看護学部, 教授 (00295768)
川口 貞親 産業医科大学, 産業保健学部, 教授 (00295776) [辞退]
植本 雅治 神戸市看護大学, 看護学部, 名誉教授 (90176644)
三浦 藍 人間環境大学, 看護学部, 講師 (10438252)
野上 恵美 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (90782037)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ニューカマー / 在日ベトナム人 / 子ども / メンタルヘルス |
研究実績の概要 |
ニューカマーの子どもは、家庭や学校など彼らを取り巻く環境の中で多くの困難やストレスを抱えると推測される。ニューカマーのうちA県に特徴的なベトナム人の小中学生のメンタルヘルスを評価し、取り巻く環境がどう影響するのかを明らかにすることを目的として在日ベトナム人の子どもへの構成的面接調査を行った。 現在までに女子15名、男子8名、計23名の協力を得た。基本的属性として小学4~6年生が18名、中学生が5名、出生地は日本21名、ベトナム2名、自認する国籍は日本10名、ベトナム13名であった。半数が離婚や出稼ぎによって父親不在の家庭環境であった。週1回以上ベトナム語(越語)で会話する割合は73.9%で両親、特に母親との会話が多かったが、普段の両親との会話は、日本語を使用することが多く、親の言うことは理解できるが自分の話したことを親が理解しているかどうかには自信を持てない子どもが2割を超えていた。特に相手が母親の場合に目立っていた。越語の読み書きの習慣のある子どもは1~2名のみであった。半数以上が大学または大学院まで進学することを望み、将来は日本語を使って日本で生活することを望む子どもは8割を超えていた。 子どもたちのメンタルヘルスについては、バールソン抑うつ尺度で平均11.2点、コンピテンスについては学習29.7点、社会28.6、自己価値26.8点、不安ストレス調査票では15.52点と、いずれも日本の子どもと大きな差はなかった。これらの結果を自認する国籍別で比較すると、抑うつ得点については16点以上の抑うつ状態に該当する子どもがすべてベトナム籍となり、平均点も日本籍の子どもより高かった。コンピテンスに差はなかったが、不安ストレス調査票の項目ごとに比較すると、ベトナム籍の子どもに自律神経症状とみられる様々な身体表現が認められることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
調査が遅れている理由として以下の点を挙げる。 1.子どもを対象とするため、保護者の同意が必要であるが、保護者が多忙なため調査の説明を聞く時間が取れず、同意も得られないという子どもが多く、子どもは協力意思を示しても調査に取り掛かれない状況がある。 2.研究代表者が所属変更したため、調査地・対象者へのアクセスがとりづらくなった。 3.研究者の本務の多忙さや私事(介護、自身の健康問題)により、研究に割く時間をとれなかった。 上記3については若干環境が改善したため、調査を再開している。1、2の状況は変わらないが、調査地との関係構築は出来ているため、協力を得られる状況にある。研究機関を延長したため、7月までに30ケースとなるよう調査を継続する。また、昨年実施できなかった教員へのアンケートを現場の教職員と相談しながら可能であれば夏季休暇中に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
島根県から兵庫県まで研究代表者が月に2回程度通い、支援活動の合間にスノーボール式にベトナム人の子どもや保護者に調査の協力を呼びかけ、7月までに30ケースを達成する。教職員への調査については、激務が報じられているため、現場の教職員と意見交換しながら実施が可能か否か検討する。可能であれば夏季休暇中に実施する。郵送法か留置きかについても教職員と検討する。 これまでに得られた結果を関係各所で報告するとともに、養護教諭、保護者等にも情報提供していく。 支援活動、研究調査の中で看護職を目指すベトナム人が少なくないことが分かったが、経済的、学力的に厳しい現状がある。実際に看護系に進学した子どもも数名おり、すでに看護師として就業を始めたものもわずかではあるが、いる。今後、看護職を目指す子どもたちにどの様な支援が必要か、受ける看護教育機関はどのような準備が必要か等を明らかにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
以下の理由により、使用額が予定した額に達しなかった。1.子どもへの調査が保護者の承諾を得られず、調査実施が難しかった。2.研究者の本務の多忙さ・私事により調査や学会参加に時間を割けなかった。
使用計画としては、子どもへの調査、教職員への調査を継続するための旅費、教職員への調査協力謝礼としての物品購入、データ入力、学会参加に係る旅費、報告書印刷、英文校正等として支出する予定である。
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