研究課題/領域番号 |
15K11895
|
研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
丹 佳子 山口県立大学, 看護栄養学部, 教授 (70326445)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 養護教諭 / 保健室 / 緊急度・重症度判断 / 学校救急処置 / 臨床推論 |
研究実績の概要 |
本研究は、学校救急処置における緊急度・重症度判断の能力を高める「養護教諭に必要な臨床推論」を明らかにするとともに、その能力を育成するための新しい教育プログラムを作成することを目的としている。 平成27年度は各種統計資料および先行研究をレビューし「頻度が高い症候・疾患」「緊急度・重症度が高い症候・疾患」を明らかにした。また平成26年度に養護教諭3200名を対象に行った重症事例調査結果を分析し「緊急度・重症度が高い症候・疾患」における養護教諭の対応と観察の特徴を明らかにした。 その結果、「頻度が高い症候・疾患」は、「腹痛、頭痛、かぜ、気持ち悪い、だるい、擦り傷、切り傷、捻挫、頭部打撲、頭・目以外の打撲」であることが明らかになった(救急処置の内容別保健室利用状況調査において、各校種4%以上であった傷病)。「緊急度・重症度が高い症候・疾患」は、「突然死、頭部外傷、溺死、窒息、内臓損傷、熱中症、全身打撲」、「視力・眼球運動障害、外貌・露出部分の醜状傷害、歯、四肢機能障害」(学校管理下の災害(平成26年版))であった。また、軽症例の中にも重症例が含まれている等で判断に迷うケースは「骨折、頭部打撲、傷、目、鼻・あご・口、腹痛、だるい、頭痛」(三木ら、2012)、「熱中症、腰痛圧迫骨折、脳内出血、くも膜下出血、頭部打撲、角膜裂傷、外傷性白内障」(河本ら、2008)、「頭部打撲、骨折、眼打撲・異物、てんかん、食物アレルギー、熱中症、過換気」(黒目ら、2010)であることが明らかになった。 養護教諭に行った重症事例における対応と観察を分析した結果、非緊急対応群の方が緊急対応群よりも観察実施率が低かったことから,学校救急処置において重症例を見逃さないためには,観察すべきことは漏れなく観察することによって,重症事例を重症として対応することに繋がることが示された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、「頻度が高い症候・疾患」「緊急度・重症度が高い症候・疾患」についての調査結果から、臨床推論を用いる時に有用な「学校現場に即した理解しておくべき症候学・病態学の知識」をまとめ、臨床推論のモデルパターン原案を作成する予定であったが、現在、「症候学・病態学の知識」をまとめている段階で、臨床推論のモデルパターン原案作成に至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
「学校現場に即した理解しておくべき症候学・病態学の知識」をまとめ、「臨床推論のモデルパターン原案」を作成し、医師による医学監修を受ける。 さらに、養護教諭が保健室で救急処置を行っている様子を観察し、緊急度・重症度判断時の発言の内容およびフイジカルアセスメントの内容を時系列に記録する。その後、この記録をもとにインタビューを行い、どのような思考プロセスで判断を行ったかを分析する。これらの行動観察およびインタビューから明らかになった養護教諭の思考プロセスの実際と「臨床推論のモデルパターン原案」をふまえて、「臨床推論モデルパターン」を作成する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、臨床推論を用いる時に有用な「学校現場に即した理解しておくべき症候学・病態学の知識」をまとめ、臨床推論のモデルパターン原案を作成する予定であったが、現在、「症候学・病態学の知識」をまとめている段階で、臨床推論のモデルパターン原案作成に至っていない。臨床推論モデルパターン原案作成への医師による医学監修のための謝金を使用していないため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
「臨床推論のモデルパターン原案」を作成し、医師から医学監修を受ける。原案をもとに養護教諭の思考プロセスの実際をふまえて、「臨床推論モデルパターン」を作成する。 作成プロセスで実施する予定の行動観察調査において、調査協力謝礼、データ整理謝金、「臨床推論モデルパターン」の医学監修費用等に用いる。
|