本研究は、学校救急処置における緊急度・重症度判断の能力を高める「養護教諭に必要な臨床推論」を明らかにするとともに、その能力を育成するための新しい教育プログラムを作成することを目的としている。 平成29年度は、判断に至る養護教諭の思考プロセスの実際と課題を調査した「養護教諭の思考プロセス調査」(A県の小中高等学校および中等教育学校541校の養護教諭に研究協力依頼を行い、52名の養護教諭が研究に協力)結果に基づいて、「養護教諭の臨床推論」の特徴を明らかにし、学校現場で使用可能な「臨床推論モデルパターン」を完成させた。さらに、「臨床推論モデルパターン」を用いて「養護教諭の臨床推論」について学ぶことができる教材(A4判冊子「学校の救急場面で役立つ臨床推論モデルパターン」、オールカラー、全28ページ)を新たに作成した。 教材の主な内容は学校現場に多い傷病で重症例を含むことがある6つの傷病(「四肢外傷」「頭部外傷」「腹痛」「頭痛」「息苦しい」「失神(一過性の意識消失)」)の臨床推論モデルパターンの説明と用語解説である。また、体験した事例(他の養護教諭と共有したい事例)を記録するための振り返りシートも巻末に掲載した。 教材に対する養護教諭からの評価は高く、「内容のわかりやすさ」「活用可能性」「体裁(ページ数、文字の大きさ、色、図)」のいずれの項目も、10点満点で8.5以上の評価を得ている。現在、現職養護教諭を対象にした研修プログラムを作成している。
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