地方都市に在住・在勤している人々を対象として,日常の生活における身体活動の実際と,身体活動に関する意識,近隣環境要因,社会的環境要因との関連を明らかにし,ライフスタイルの特徴に応じた身体活動量増加・維持のための支援方法を検討することを目的に,無記名・自己記入式調査を行った.調査は平成28年度に実施し,平成29年度にはデータ分析を行い一部を報告した.平成30年度にはさらに分析を追加した. 勤労者1990人(回収550人)を対象とした調査の分析では,行動変容ステージ(意識的に身体を動かすことを実行している/していない)と,歩数計装着の有無,歩く速度,通勤手段,近隣歩行環境要因との関連について検討した.近隣歩行環境要因の中で,意識して身体を動かしていることと有意な関連がみられたものは,「近所を歩くときれいな街並みや景色,目を引く建物など,興味をひかれるものがたくさんある」,「近所に公園・ウォーキング道路がある」と認識していることであった.近隣環境を肯定的に捉えている人の方が,意識的に身体を動かしている傾向がみられ,身体活動量の増加・維持に向けた健康づくり支援に,環境要因の活用可能性が示唆された. 高年齢者(定年退職者等)604人(回収341人)を対象とした調査の分析では,自覚的健康感(自分自身が健康だと感じているか)と身体活動,近隣環境要因,社会的環境要因との関連性について検討した.健康だと感じていることには,歩く速度が速いこと,および「近所の人たちはお互いに連帯感を持っている」と認識していることが有意に関連していた.社会的環境要因が身体活動に影響していることが先行研究では報告されているが,本研究の対象者では同様の関連がみられなかった.しかし社会的環境要因と自覚的健康感には関連がみられ,健康づくり支援を考える上で,身体活動とともに社会的環境要因が重要な要因であることが示唆された.
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