最終年度の平成29年度は、発達障害者支援専門機関における相談・支援として抽出された項目の確認と、発達障害児支援における専門支援機関相談員と市区町村保健師の双方に対する役割期待と連携の課題の抽出を目的とし、2県内で発達障害者支援に従事する関係職種(市町村・県保健師、心理職、作業療法士、通級教室担当教員等)5-6名を1グループとするグループインタビュー4セッションを実施し、参加者の発言内容を質的帰納的に分析した。その結果、役割期待として専門支援機関相談員による個別事例の専門的アセスメント、養育者の意思決定支援および保育等施設に対する助言、市町村保健師による養育者への身近な支援、支援調整及び地域の支援体制構築が明らかになった。さらに、発達障害児支援の詳細と役割認識の実態を明らかにすることを目的に、全国の市区町村524か所の保健師及び発達障害者支援センター93か所の相談員を対象とする郵送調査を実施し、それぞれ43件(46.2%)、151件(28.8%)から回答を得た。その結果、市町村保健師に役割があると考える者が多い項目は対象児の経過観察、育児相談、養育者の心理的支援、家族支援、支援態勢づくり、地域の支援人材発掘・育成・配置、専門支援機関に役割があると考える者が多い項目は児の発達特性評価、保育所等の支援、地域の支援体制構築であった。さらに、市町村保健師と専門支援機関相談員の間で役割認識の不一致がある項目として、支援方針決定、支援計画立案、児童発達支援事業利用の支援、保育サービス利用支援、就学の支援、医療継続支援、支援者会議運営、養育者に対する児への関わり方の助言、養育者への将来の見通しに関する説明等多岐に渡る項目が明らかになった。これらの結果に基づき、発達障害児支援における専門支援機関と市区町村保健センターによる重層的支援の構造と、その実質化に向けた課題を明らかにした。
|