研究課題
経験学習理論を理論的枠組みとして、行政における保健師の基本的な実践能力の育成のためのケースメソッド学習プログラム(以下CMP)の開発とその検証を目的とした。まず人材育成担当者へのインタビュー調査、10年目までの保健師及び人材育成担当保健師への新任期・中堅前期に期待する実践技術項目(全41項目)の到達度にについて、質問紙調査を実施した(人材育成担当者N=123、10年目以下保健師N=143)。これらの調査を基に、新任期・中堅前期保健師を対象とし「地域の状況と対象者の生活問題を結びつけたアセスメント」、「健康な力に目を向けたアセスメント」、「家族全体のアセスメント」、「他機関へのリファー後の結果確認と評価」、「家族への意図的な働きかけ」、「潜在課題を予測する」、「主訴の背後にある課題の把握」の6項目を学習目標としたCMP(暫定版)を開発した。本CMPを受講した新任期保健師(N=72)および人材育成担当(N=19)に実施した質問紙調査では、プログラムへの満足度、現実性、適切性とも高く、満足度は現実性と適切性と関連していた。また、学習目標にあげた技術項目習得のCMP受講前と受講6M後の自己評価では、研修内容を想起した群で、有意に上昇していた。さらに暫定版を修正したCMP(修正版)と本CMPと同様の学習目標を含む講義プログラムとの比較検証を、10年目以下の保健師を対象に実施した。プログラム参加2か月後の質問紙調査(N=48)では、講義群で有意に上昇した項目もあったが、CMPに具体的に含まれる技術項目獲得の自己評価はCMP群で有意に上昇した。また家庭訪問の展開方法や生活情報の収集、生活アセスメントや家族アセスメント技術の活用は、CMP群で有意に高かった。これらの結果から、本CMPでの実践的技術習得への有効性が示された。なお、本CMPは調査協力自治体および協力者、希望者に配布した。
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