研究課題/領域番号 |
15K11909
|
研究機関 | 人間環境大学 |
研究代表者 |
三並 めぐる 人間環境大学, 松山看護学部, 教授 (20612948)
|
研究分担者 |
岡 多枝子 人間環境大学, 松山看護学部, 教授 (30513577)
阿部 眞理子 横浜創英大学, 看護学部, 准教授 (30734165)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 養護教諭 / 救急 / 災害 / 危機管理 |
研究実績の概要 |
「養護教諭の危機管理力を高める実践研修プログラム開発」に関する調査研究を推進した。研究3年目となる平成29年度の研究実績は以下の通りである。 第1に、学校における災害発生時の危機管理対応に関する先行研究を再検討し、危機的な状況下で学校保健の中核的役割を担う養護教諭が担う役割として、「リスク・マネジメント」とともに「クライシス・マネジメント」が特に重要であるとの知見を得た。 第2に、災害発生時には地域の避難所の多くが学校であり、災害による停電や断水で災害支援チームが即座に避難所へ向かうことが困難な状況の中で、養護教諭が専門知識と技術を生かして児童生徒のみならず地域住民の心身の健康に関わる重要な役割を担うこととなる。そこで重要となる負傷者に対して最善の救命効果を得るために医療の優先度を判断する「トリアージ」の専門的知識・技術を持った養護教諭であるとの知見を得た。 第3に、養護教諭が行うトリアージでは、児童生徒のみならず地域住民の異常所見から緊急性に応じた優先度を判断する専門性が求められるとの知見を得た。 第4に、応急手当の対象が外傷よりも「低体温」や「慢性疾患の悪化」が多く、災害時のトリアージの現場でありながら、持病患者及び低体温患者の「脱水」や「熱中症」の危険など、養護教諭には慢性疾患患者に対する重症化予防も視点に気温等の環境を考慮することが重要であるとの知見を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「養護教諭の危機管理力を高める実践研修プログラム開発」に関する研究課題の進捗状況は、概ね順調に進展している。その理由は以下の通りである。 第1に、日本スポーツ振興センターの災害事例集及び日本学校救急看護学会等の学術誌・HPからデータ収集を行い、分析を進めている。特に、独立行政法人日本スポーツ振興センターでは、学校等での災害時の対応を『スポーツ事故防止ハンドブック』にまとめて、重大事故につながるケース、発生件数の多い災害の中から、「突然死・頭頚部外傷・熱中症・歯の外傷・眼の外傷」について、事故を防ぐための10カ条や事故発生時の対応フローチャートを作成しており、本研究課題の「児童生徒等の命を守るための養護教諭の危機管理力を高める実践研修プログラムの開発」に大いなる示唆を得ることができた。 第2に、当初の計画ではインタビュー調査及び関係機関からのデータ収集を行い、データ分析により視覚、聴覚、触覚を意識できる実践研修プログラムの開発準備を行うこととしていたが、プレ調査の段階で、多くの対象者から「児童生徒や住民の生命を守る危機管理の役割を養護教諭が担うのは厳しい状況にある」「東日本大震災など大規模災害時に求められる養護教諭の役割を検討する為には、教員養成から検討する必要がある」などの意見が出された。その為に、研究方法の再検討を行い、養護教諭養成課程に「リスク・マネジメント」とともに「クライシス・マネジメント」、災害時のトリアージなどの専門的知識・技術を導入することの可否を検討する計画に変更することとした。これによって、災害発生時の危機的な状況下で学校保健の中核的存在である養護教諭を養成する端緒が拓かれた。
|
今後の研究の推進方策 |
「養護教諭の危機管理力を高める実践研修プログラム開発」に関する今後の推進方策は以下の通りである。 第1に、養護教諭養成課程での実証研究を推進することである。具体的には、「学校保健」「養護概説」など、養護教諭の専門的資質を培う科目において、アクティブラーニングを導入した「修正版反転授業」に対する実証研究を進める。学修課題の中に「災害時の危機管理能力」や「学校保健安全委員会の組織活動」「大規模災害時の保健室機能」などを取り入れて、教職学生たちが主体的・対話的な事前課題への取り組みと授業内での発表と議論、教員の助言を踏まえて、ディープラーニングを行うことで、実践研修プログラムの開発と評価を行う。 第2に、研究全体を総括し、研究成果をまとめて学会発表や学術誌等での発表を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
1.次年度使用が生じた理由として、当初の研究計画の中心は、全国各地の学校管理職(校長・教頭)と養護教諭、養護教諭養成課程に在籍する学生から30名の研究協力者に依頼してインタビュー調査を実施し、調査結果の分析をもとに「養護教諭の危機管理力を高める実践研修プログラム開発」を行うことであった。その為、全国各地でのインタビュー調査に必要な旅費、人件費・謝金を計上していた。しかし前述の通り、インタビューに先立つプレ調査の段階で、複数の調査対象者から研究推進に関する有意義な意見や提案をいただき、養護教諭の養成課程に焦点化したアクティブラーニングによる「修正版反転授業」のプログラム開発を行うことに転換した。その為、研究代表及び研究分担者で協議を行い、教職学生による主体的・対話的な学修活動への参与観察と実証研究を行う為の次年度使用に切り替えることとした。 2.次年度計画の内訳として、「物品費」では「学校保健」や「養護概説」などで学生たちがアクティブラーニングに活用する救急薬品や災害時のトリアージ用の消耗品に支出する。「旅費」は研究代表及び研究分担者による研究会及び学会発表などの旅費に支出する。「人件費・謝金」は参与観察及び実証研究データの分析とプログラム開発に関する人件費と謝金を支出する。
|