研究課題/領域番号 |
15K11910
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研究機関 | 活水女子大学 |
研究代表者 |
原岡 智子 活水女子大学, 看護学部, 准教授 (90572280)
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研究分担者 |
金谷 泰宏 国立保健医療科学院, その他部局等, 部長 (40506317)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 災害 / 公衆衛生活動 / 卒前教育 / 卒後教育 / 演習 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究の成果として、実際の災害時公衆衛生活動のためには、活動の最も基盤となる情報についての具体的な教育が必要であることが明確となり教育の方向性を得ることができた。 この研究成果に基づき、平成28年度は、卒前教育、卒後教育ともに、情報収集・評価分析、対応、連携調整等に関して知識の習得と実践能力の向上を目標に、具体的な演習内容を取り入れた教育を行った。 看護学生への災害時公衆衛生看護活動に関する教育については、看護学生の対象者が少ないため、災害時に専門職として活動する可能性があり災害の教育を受けていないことを共通点とする看護学生、医学生、保育士学生を対象に、災害対応の講義と情報に関する演習を行い、教育効果の評価のために教育前後の調査を行なった。具体的には、情報に関する教育の目標・内容・方法について計画立案し、教育前後の調査票を作成した。教育内容は、具体的な災害発生状況と被害状況を設定して実践で必要な情報に関する具体的な内容の演習と、各学部の専門性に応じた災害対応の基本と情報についての講義とした。教育前後で「災害時できると思う」を点数化で調査した結果、全学部の対象者が、情報に関する項目全般について教育前より教育後が高くなっていた。しかし、教育前が高い点数ほど教育後との点数の差が少なかった。 災害時公衆衛生活動に関する現任教育については、平成27年度と同様に実際の災害時に活動する他職種と合同で情報に関する訓練を中心に行い、教育前後の調査を行った。訓練は、タブレットを用い、実際の被害想定に添って、地域の被害状況や避難所・避難者の状況についての時系列の変化に応じた情報収集、対応、連絡調整等について行った。全項目について教育前より教育後の方が「災害時できると思う」程度が高くなったが、教育前のできる思いが高いほど教育後の差が少なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、看護職に対する卒前・卒後を通した災害時の公衆衛生看護活動の教育プログラムを検討し、教育を実施し、その前後における評価を行ない、各段階に最適なプログラムの開発を目標としている研究2年目の平成28年度は、平成27年度の調査結果の分析・評価を行い、それに基づき、卒前・卒後の段階に応じた教育の目標・内容・方法等の修正と教育効果の評価のための質問紙調査票の検討・作成、教育の実施、教育前後の調査を実施する計画としていた。 平成27年度の卒前教育の研究については、看護学生に対する災害時公衆衛生活動全般の教育前後の調査で、「災害時情報の収集・提供ができると思う」が教育前後で3割前後であり教育前より教育後の方が少なかったこと、6割が将来看護職として活動するために情報収集・提供ができることが必要と思っていることが明らかになった。また、卒後教育としては、対象である看護職を含む災害時対応機関職員等に対する情報の教育と訓練前後の調査から、情報に関する全調査項目について訓練前より訓練後が有意に高くなっていたが、十分できる状況ではなかったことが明らかになった。さらに、保健所職員への情報、対応等の教育方法の効果の分析結果では、大まかな内容より詳細な内容の演習の方が教育効果が高かった。 これらの平成27年度の研究結果を基に検討し、災害時の公衆衛生看護活動のために卒前・卒後教育ともに活動の基盤となる情報に関する教育が必要であると判断した。そして平成28年度の研究は卒前・卒後の情報に関する教育とし、教育の目標・内容等や調査項目・調査票の作成を行い、教育と教育前後の調査を実施し結果を分析することができた。しかし、実際災害時に公衆衛生活動を行なった看護職に対する質的調査は、災害の状況からインタビュー調査を行うことはできなかった。 このような研究実績と今年度の計画を比較して、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では平成29年度は、平成28年度の調査結果の分析・評価とその結果に基づき、教育の目標・プログラム・内容等についての評価・修正を行い、各段階に応じた教育の目標等の修正、教育の実施と教育前後の調査、さらに研究成果を総合して教育目標、プログラム、内容の完成としていた。平成27年度の研究実績から、災害時の公衆衛生看護活動のために平成28年度は情報に関する教育と調査を実施した結果、教育効果が見られた。平成29年度は、教育目標、プログラム、内容等のさらなる効果的な教育の修正を行なうために、引き続き、平成28年度の調査結果を多角的に分析する。さらに平成28年度と同様、平成29年度も実際に災害時公衆衛生活動において基盤となる情報収集・評価分析、対応、連携調整等に関し、より実践的な演習を検討・組み立て、その演習を含めた教育を実施して、教育前後の調査・分析を行なう。 卒前教育については、看護学生対象者が少ないことから、平成28年度と同様に災害時活動する専門職として看護学生以外の学生も対象とした教育を5回程度実施して、教育前後の調査を行う。多面から分析することで教育目標・内容等を検討修正する。 また、卒後教育については、教育の対象者を平成28年度と同様に看護職だけでなく他職種を含めた対象に教育と調査を行なう予定であるが、研究対象人数の課題の対応策として、本研究の対象や教育目標等と同じ様な国立保健医療科学院の研修において教育前後に調査を行い結果を多面から分析し教育目標等を検討修正していく。 調査結果は、単年度毎と平成28年度と平成29年度合わせたものの分析・評価を行い、教育の目標・プログラム・内容等の検討・修正をして、卒前・卒後教育の教育プログラムを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
量的調査のデータ入力のためのアルバイト雇用をしなかったため。 また、研究の打合せや教育・調査の実施、調査結果の検討に関する会議が予定の回数より少なく、質的調査、現地での情報収集等が実施できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は平成28年度と同等の回数の教育および調査を実施するが、平成28年と平成29年を合わせてと単年毎の調査結果の分析・評価をして、教育内容の修正を行ない教育プログラムを検討する計画なので、7回程度の研究打合せおよび調査結果の検討会、5回程度の教育と量的調査、3回程度の質的調査、情報収集等に係る旅費等を予定している。また、データ入力等のための業者委託費や教材費も予定している。
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