研究課題
国際宇宙ステーションで33日間栽培されたシロイヌナズナを用い,地上部が自立しなければならない花序柄の組織の発達に微小重力環境が与える影響を調べた.33日齢の試料は樹脂包埋し横断切片を観察した.その結果,花序柄先端部の横断面積および細胞数は,μG区では宇宙1 G対照区と比べ有意に減少した.組織別では,表皮,篩部,形成層,髄の横断面積および細胞数が,μG区で宇宙1 G対照区と比べ有意に減少していた.また基部において,μG区では宇宙1 G対照区と比べ髄腔が発達していた.微小重力環境下では,根圏も含めて植物体を取り巻くガス環境変化が内部組織の発達に影響する可能性も考慮する必要があるかもしれない.またシロイヌナズナを用いた過重力栽培により,長期の 10 G 過重力によりバイオマスが増加することを示唆する結果を筆者らは予備的に得ているものの,その仕組みはわかっていない.被子植物と同じタイプの光化学系を持ちながらも,無種子植物であるコケは体サイズが小さくまた栄養生殖での均質な集団が得られ,バイオマス制御に直接関わる光合成の調査も容易である.また無種子植物についても確認できれば,地球と異なる重力環境に陸上植物が適応する能力の普遍性を検証することができる.そこでコケのモデル植物であるヒメツリガネゴケを用いて調べたところ,10 G下で25日間育てた集団では,茎葉体密度が増すことでシャーレ当たりのバイオマスが増加していた.(そしてこのとき,実際に葉緑体のサイズ,二酸化炭素コンダクタンス,光合成速度が増加していることは共同研究により確かめられた.)またさらに無種子植物の重力応答に関して,シダのリチャードミズワラビでは,重力ベクトル方向の感知に葉緑体そのものが関わる可能性を示唆する結果も得られた.
2: おおむね順調に進展している
栄養成長および生殖成長に関しては,引きつづき長期過重力植物栽培システムのための栽培容器の改良や環境整備を進めた.その過程で,過重力処理区において,対照区と比べ温度が高くなる場合も見られたため,栽培装置に放熱効率を上げる改良を加え,解決した.その上で長期過重力が根系に与える影響について再検証中である.生殖成長に関しても調査を進めている.最適な光源については引きつづき検討中である.微小重力試料については,支持組織の発達に重力環境が与える影響の,X線CTによる非侵襲解析の観察(データ取得)ができた.微小重力試料のロックウール中の根系の解析については,現在での最適と考えられる条件でX線CT撮影を行った.以上より,概ね順調に進展していると判断される.
ロックウール中の根系の解析については,現在での最適と考えられる条件でX線CT撮影を行い,現在データ解析中である.栄養成長に関する長期過重力が根系に与える影響については,側根形成などをふくめて詳細を再検証をすすめる.支持組織の発達に重力環境が与える影響の解剖学的解析およびX線CTによる非侵襲解析の観察(データ取得)ができたので,その解析を進める.長期植物栽培システムについては,現在最適な光源を検討中である.引きつづき生殖成長までの解析を目指す.種子のプロテオミクスについては,予備解析を行い,本解析の準備中である.
新たに,長期過重力植物栽培システムのための環境整備において光源検討の必要性が生じた.
理由に述べた項目の実施を行う.具体的には,長期過重力植物栽培システムのための環境整備において光源検討を行う.
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 謝辞記載あり 4件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
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