研究実績の概要 |
・過重力実験:国際宇宙ステーション搭載予定の短腕遠心機(15 cm)の生物適合性を調べるため,短腕遠心機(77 rpm:宇宙の微小重力環境下では1 g,地上の1 g環境下では1.4 g相当)内でマウスを2-4週間飼育し,体重,摂食・飲水量,活動量,中枢でのFos発現,前庭系を介する運動等を測定し,長腕遠心機(150 cm)飼育マウスと比較した。その結果,短腕遠心機飼育マウスと長腕遠心機飼育マウスに差はなく,短腕遠心機がマウス飼育に使用できることが確かめられた。また,過重力環境飼育で起こる体重減少,摂食・飲水量減少,活動量減少が前庭破壊マウスでは見られなくなることから,これらの変化は前庭系を介して引き起こされることが分かった (PLOS ONE, 10(7): e0133981, 2015)。 ・国際宇宙ステーションで飼育したマウスを回収する時に発生する5-10 g 2分間の影響を調べるため,10 g 2分間の暴露後の行動,摂食量,体重変化,中枢でのFos発現を調べた。前庭神経核,孤束核,室傍核,視索上核に有意なFos発現を認めた。孤束核以外のFos発現は,前庭破壊マウスで有意に抑制された。血中コルチコステロン濃度は負荷30分後に有意に増加したが,90分後には前値にまで回復した。また,負荷後1日間の摂食量は軽度減少したが,体重の有意な変化は認められなかった。以上の結果から,回収時の重力負荷は一時的なストレスとなるが,その影響は短時間であることが分かった。 ・骨迷路標本から感覚上皮細胞をレーザーマイクロダイセクションで切り出し,RNAseq, ChIPseqを実施する方法を確立した。
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