研究課題/領域番号 |
15K11919
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
森田 隆 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (70150349)
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研究分担者 |
吉田 佳世 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30311921)
木津 あかね 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (30623201)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 宇宙放射線 / 宇宙実験 / 胚性幹細胞 / DNA損傷 |
研究実績の概要 |
宇宙での長期にわたる有人活動が可能となった現在、宇宙放射線の人体への影響、特に、子孫に影響を及ぼす生殖細胞への影響は、重要課題の一つと考えられる。宇宙環境下では、地球上では存在しない様々な宇宙放射線にさらされることとなる。これまでの宇宙研究の成果から、それぞれの宇宙放射線は低線量であることから、短期間での被曝では人体への影響は少なかった。しかし、低線量であっても高エネルギー粒子線を含む複数の宇宙放射線に長期間継続的に被曝することによる細胞やDNAへの影響は明らかではない。これらの影響を解析するために、我々は、凍結した万能細胞(ES細胞)を「きぼう」内のMELFIに長期間保管し、地上へ戻したのち、受精卵に移植し、マウス個体への発生過程での影響及び生殖細胞への影響を継時観察することにより解析する。 今年度は2015年2月23日に2回目のサンプルが回収された。さらに2016年4月以降に、3回目のサンプルが 回収される予定である。DNA損傷のマーカーであるリン酸化H2AXについてFACSで定量する予備実験として、胎生線維芽細胞を用いて、リン酸化H2AXの発現の蛍光強度の変化について調べた。マウス胎生線維芽細胞における放射線照射後のリン酸化H2AXの量をフローサイトメトリーで定量的に調べた。予備実験として0Gyと5GyのX 線照射した細胞のリン酸化H2AXの発現量は、リン酸化H2AXの蛍光強度のヒストグラムにおいて0Gyより5Gy照射の細胞が右方移動しており、発現が増加していることが分かった。ドットプロットにおいても、リン酸化H2AX陽性の細胞集団が上方にシフトしており、5Gy照射細胞のリン酸化H2AX陽性細胞が増加していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNA損傷のマーカーであるリン酸化H2AXについてFACSで定量する予備実験として、胎生線維芽細胞を用いて、リン酸化H2AXの発現の蛍光強度の変化について調べた。マウス胎生線維芽細胞における放射線照射後のリン酸化H2AXの量をフローサイトメトリーで定量的に調べた。予備実験として0Gyと5GyのX 線照射した細胞のリン酸化H2AXの発現量は、リン酸化H2AXの蛍光強度のヒストグラムにおいて0Gyより5Gy照射の細胞が右方移動しており、発現が増加していることが分かった。ドットプロットにおいても、リン酸化H2AX陽性の細胞集団が上方にシフトしており、5Gy照射細胞のリン酸化H2AX陽性細胞が増加していることが示唆された。また、マウスES細胞にHIMACで、Feイオン線(500MeVu)を0~0.75 Gy照射後、培養しFISHによる染色体異常の解析を行った。しかし、凍結細胞融解後の37℃での培養により、細胞分裂のため、4倍体の染色体を有する核が増加し、解析が困難になった。そこで、本実験では、培養時間を24時間から、15時間、5時間へと短縮し、その後、コルセミド処理、さらにFISHによる染色体解析を行った。その結果、培養15時間でも4倍体が多いが、5時間培養では、4倍体が少なくなった。解析できる細胞数は少なくなるが、この条件が適当であると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)地上実験の継続 本年度は、打ち上げが成功し、3年経過したサンプルが帰還する予定である。それまでの間に、X線照射装置と放射線医学総合研究所の加速器(HIMAC、7月照射予定)を用いて、凍結ES細胞の融解後のヒストンH2AXフォーカス形成の定量化のチェックとin situ hybridizationによる染色体異常の解析を確認する実験をコントロールとして再度行う。 (2)1~3回目の宇宙実験のサンプルの増殖率、染色体異常、DNA損傷の解析 第一回目の回収サンプルは2014年5月に、第二回目の回収サンプルは2015年2月に第回目のサンプルは本年5月に地上に回収されるので、それらのサンプルについて、引き続き、以下の解析を実施する。(1)ヒストンH2AXフォーカス形成を検討する。フォーカスは、DNA二重鎖切断のマーカーとなり、宇宙放射線による損傷を定量化できると考えている。(2)染色体異常をin situ hybridization により定量的に検出する。(3)細胞増殖を調べる。(4)ES細胞解凍後受精卵にマイクロインジェクションし、その後の発生を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
宇宙実験により、国際宇宙ステーションからの回収が遅れ、サンプルの解析ができず、次年度での回収時に解析を行うこととなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
国際宇宙ステーションから、平成28年度5月にサンプルが回収される予定になったので、平成28年度に細胞の増殖率、DNA損傷、染色体異常を解析するために使用する。
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