研究課題/領域番号 |
15K11921
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
鈴木 芳代 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主幹研究員(定常) (10507437)
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研究分担者 |
簗瀬 澄乃 大東文化大学, スポーツ・健康科学部, 准教授 (90249061)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 放射線影響学 / C. elegans |
研究実績の概要 |
本研究では,宇宙放射線によって誘導される線虫(C. elegans)の咽頭筋運動の停止が数時間で回復する現象(筋運動変調)に着目し,筋運動停止からの速やかな回復に関する「ホメオスタシス(生体恒常性)維持機構」を明らかにすることを目的とする. 今年度は,昨年度に引き続き,「1. 放射線に対するホメオスタシス維持機構における酸化ストレスの関与の解析」に関する放射線照射実験を反復して行った.その上で,研究分担者の協力を得て,今年度の主テーマである「2. 放射線に対するホメオスタシス維持機構に関わるストレス応答遺伝子の探索」に関する研究を進めた.具体的には,野生型の線虫に放射線を照射し,主に頭部の筋細胞及び神経細胞において発現する遺伝子のうち,ストレス応答に関与する遺伝子を中心として,照射条件の違いによって発現遺伝子及び発現量に違いがあるのかを探る遺伝子発現解析を進めた.さらに,これに関連して,放射線由来の酸化ストレスが遺伝子発現の変化にどのように関与しているかを調べる実験(高濃度酸素曝露線虫や突然変異体を用いた行動解析実験)や放射線照射が線虫の寿命に及ぼす影響を調べる実験にも取り組んだ.なお,放射線照射実験では,Co-60ガンマ線(低LET放射線)照射に加えて炭素イオン(高LET放射線)照射も同様に行い,線質による応答の違いの有無も調べた. 一連の実験の結果,線虫に備わるホメオスタシス維持機構が,放射線照射後の筋運動を速やかに回復させるばかりか,寿命にポジティブな影響をもたらすことを示唆するデータが得られつつあり,引き続き注意深く実験・解析を進める必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の遅れをある程度解消し,当初計画に準じて研究を進められている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度には,今年度実施した研究項目1.及び2.に係る実験・解析を引き続き進めると共に,「3.放射線に対するホメオスタシス維持機構の強化に関する検討」に関する研究に取り組む. 具体的には,線虫の筋運動の停止を誘導しない程度の線量の放射線を事前に繰り返し照射することで,放射線ストレスに対するホメオスタシス維持機構を強化し得るか,すなわち,目的の線量の放射線照射直後に筋運動を停止する個体が減少したり,停止した筋運動の回復が早まるようなことが起こり得るのかを調べる. 実験は,研究代表者と研究分担者が協力して実施する.この他,ルーチンワークとして実施可能な実験データの整理及び解析処理を担当する研究業務補助員1名を雇用し,作業の円滑な実施及び効率化を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に執行できなかった予算を本年度に繰り越したため,本年度においても次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した予算を活用して研究業務補助員1名を雇用し,データ解析・整理作業を効率的に行う.
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