研究実績の概要 |
本研究は,震災復興をめぐる法政策と公共政策を,法理学的観点から価値論的に評価することを目的とする。本研究独自の視座は,津波被害と原発被害にかかわる責任を,民事責任から国家行政責任にわたる連続的な“社会的責任”の観点から総合的に把握する点に存する。 平成30年度の研究実施計画は,原発事故をめぐる法的・政策的諸課題について,各地の第一審及び控訴審に係属している民事裁判の動向,および裁判例に対する評釈を踏まえつつ,東京電力経営者の刑事責任を加味して,メルトダウン事故に対する法的責任を総合的に評価することを課題とした。 民事責任に関する成果は,すでに平成29年度に,Kabashima, Hiroshi: "Rethinking TEPCOs Liability for Nuclear Damages", Craig, Ch (ed.): Knowledge and Arts on the Move, Mimesis 2018として公表しており,本年度は,刑事裁判の第一審公判期日にかんする情報を収集分析することにより,国際学会11th East Asian Conference on Philosophy of Law, Faculty of Law, The University of Hong Kong, Dec 13-14, 2018において,Kabashima, Hiroshi: "Dispute Resolution of a Nuclear Accident - the case of Fukushima"として口頭発表を行った。 大変残念なことに,研究期間中,勤務先の管理職の業務のためエフォートを割けず予定の現地調査ができなかったほか,東京地裁に係属中の刑事事件の判決がくだされなかったために,原発事件の法的責任にかかる総合的評価を論文としてまとめるに足りなかった。
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