研究課題/領域番号 |
15K11930
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
紅谷 昇平 兵庫県立大学, 総合教育機構, 准教授 (10455553)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 災害対応 / 災害マネジメント / 災害行政 / 業務継続計画 / 災害対策本部 / 地域防災計画 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、4月に熊本地震が発生したため、熊本地震における庁舎被害が自治体の業務継続に及ぼした影響や益城町等の被災自治体の災害対応状況を現地調査し、自治体の災害対応の組織や体制、他自治体の応援派遣、被災自治体の受入体制についての資料収集や実態把握を行った。また平成27年度に収集した東日本大震災の自治体の災害対応に関するデータの分析も併せて行った。 その結果として、自治体の災害対策本部の課題として「平常時との業務内容(質)」、「業務量の増大(量)」、「職員・設備等の資源の不足」、「執務環境の悪化」、「外部応援受入体制の不足」等を指摘するとともに、その改善に向けて「外部組織を含めた情報の共有」、「状況認識の統一と部局間調整」、「全庁的な進行管理のあり方」を提案した。さらに災害対策本部長の役割として「素早い意思決定」、「庁内マネジメント」、「外部調整」、「メッセージ発信」の4つを示すとともに、自らが陣頭指揮をとって指揮命令を行うタイプ(直接指示型)と、防災部局幹部職員(危機管理監等)に意思決定の多くを委任するタイプ(権限委任型)の二つのリーダーシップのタイプがあることを示した。さらに、災害対応の組織に求められる機能として、業務継続に向けた資源管理・優先業務の明確化と、支援受入体制があることを指摘した。 これらは、本研究が目指す日本版の災害対応組織マネジメントモデルのドラフト案となるものであり、その成果の一部は論文にまとめて公表すると共に、自治体職員を対象とした研修等を通して普及を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画スケジュールどおり、平成28年度には、日本版の災害対応組織マネジメントモデルのドラフト案を示すことができ、研究成果としては、概ね予定どおりに進捗していると考えている。 ただし、平成28年熊本地震の発生にともない、被災自治体の災害対応や復興計画策定への支援に関する業務が多数発生すると共に、熊本地震の教訓を踏まえて全国の自治体が防災体制、防災計画の改善に取り組む状況となり、研究計画を策定した時点と比べると、外部環境が大きく変わっている。例えば、アンケートや研究会で自治体の防災担当職員から研究成果についてフィードバックを受ける予定であったが、上記のような防災体制の見直し業務等に時間を取られ、研究等に関わって頂くことが困難な状況である。また、熊本地震から新たに得られた教訓や、国・地方自治体の災害対応体制改善の動きもキャッチアップする必要がある。 このような状況を踏まえると、より優れた成果を出すためには、当初の研究計画や進行体制、スケジュールを見直し、より時間をかけて調査、研究を進めることが必要であり、研究全体としてはやや遅れている状況だと認識している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度には、熊本地震の教訓を踏まえた自治体災害対応体制の見直しの動きをキャッチアップすると共に、これまで出来ていなかったアンケート調査や研究会等を通して、自治体職員からのフィードバックを受けることと、海外の標準的な災害対応モデルとの比較研究に取り組み、より完成度の高い日本型の災害対応の組織マネジメントモデルの開発につなげていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
熊本地震が発生したことにより、研究計画では実施予定であった自治体職員を対象としたアンケートや研究会、海外調査を実施しなかったこと、また熊本地震の現地調査については、現地支援活動や復興計画策定委員会等の別予算で行った業務と共に実施することが出来たこと、資料の分析や論文の取りまとめにおいては経費支出がなかったことから、平成28年度の経費利用が少なく、次年度使用額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に実施できなかったアンケート調査や研究会、海外調査は、平成29年度に実施予定であり、そのために使用する予定である。
|