平成30年度は、同年6月に発生した大阪府北部地震、7月に発生した平成30年7月豪雨、9月に発生した台風21号による高潮・強風被害と北海道胆振東部地震を事例として、災害の特徴ごとの自治体の災害対応の実態及び課題について現地調査を行った。得られた重要な知見として、同一都道府県内で複数市町村が被災した場合、市町村ごとの災害対応の体制・能力の差異や都道府県の災害対応能力の限界により、十分な情報把握や支援活動が困難であったことが挙げられ、標準的組織マネジメントモデルの必要性が改めて明らかになった。また外部自治体による被災自治体への支援体制については、平成28年熊本地震を契機に導入された総務省による自治体の相互応援調整システムや災害マネジメント総括支援員の派遣制度が効果的だったが、被災直後の段階では、被災前の自治体の自主的な応援協定・応援体制の有無が早期の応援確保に影響したことを明らかにした。 また、アメリカの標準的な災害対応システムであるICSやアメリカの防災資格制度(AEM、CEM)等について研究会を開催し、日本における災害対応の標準的組織マネジメントモデルに求められる要件や標準的な災害対応ノウハウを様々な組織・個人に普及させるための仕組みについて検討を行い、災害時の自治体の組織マネジメントモデル案を開発した。 これらの研究成果は書籍や論文の刊行、学会発表を通じて社会に公表するとともに、研修等で活用可能な資料をホームページで公開した。さらに全国の自治体等の災害対応力の向上を目指した研修会を実施し、自治体や防災関係組織の職員等に対して成果を普及させる活動を行った。
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