研究課題/領域番号 |
15K11945
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
森 晃爾 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (50230066)
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研究分担者 |
久保 達彦 産業医科大学, 医学部, 講師 (00446121)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 危機管理 |
研究実績の概要 |
大規模災害発生時の労働衛生活動の在り方を検討するために、世界貿易センター倒壊テロ事件(以下、WTCテロ)と福島第一原子力発電所事故(第一原発事故)を対象に文献上の知見について、比較検討を行った。WTCテロについて7編の文献が抽出され、それらは、「労働衛生管理を含む緊急時体制に関連したもの」、「健康影響や労働衛生面の改善・予防に関連したもの」、「健康影響の緩和を目的としたケアに関連したもの」に分類された。一方、第一原発事故については、先行レビューで整理された文献を用いた。その結果、大規模災害発生時に対応する労働者の健康確保のためには、防災基本計画に関連した諸規程に労働衛生に関する規定を盛り込むとともに、長期にわたって支援を行うことを前提とした実務的な支援機能、災害対応に関わる可能性のある労働者に対するトレーニングの仕組み、健康影響の緩和を目的としたケア体制などを構築することが必要と考えられた。以上の結果を論文としてまとめて投稿した。 自治体のうち、危機対応に職員の健康について準備を進める某政令市の担当課長にインタビューを行った。災害が大規模である場合、遺体を扱う可能性があることや、市民から厳しい言葉で責められることが多いなど、特に心的外傷のメンタルケアは重要だと考えている。対応を可能とするための手引きを作成中である。しかし、現実的には域内の医療職の多くが住民ケアに従事し、マンパワーが大きく不足すると考えられる。そのため、職員の支援を行うために、外部から健康管理の専門家である医師を受け入れることが必要であるが、そのためには窓口が必要である。そのうえで、自治体職員の健康管理のみを扱う公的な支援組織があれば、窓口を通じて支援活動を行うことができる可能性がある。 その他、熊本大地震の際の自治体職員の課題について、益城町や熊本市の事例について、一部、情報収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、東日本大震災を多少に大災害における対応について調査を行うことになっていたが、熊本大地震を受けて現地での意見交換を行うなど、実際の経験を聴取することができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる平成29年度は、以下の検討を行う。 1.米国以外の国における危機管理体制における従事者への配慮の仕組みに関する調査 2.大災害(熊本大地震)に対応した自治体職員に発生した安全衛生ニーズに関する調査 3.自治体職員の支援の枠組みの検討 そのうえで、大災害発生時に従事者の安全と健康を守るための支援体制のあり方について提言を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度のみでは、当初の予定額を使用したが、平成27年度からの持ち越し分が、あったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、各国調査での旅費、成果発表のための報告書の作成等に用いる予定である。
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