研究課題/領域番号 |
15K11950
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
益守 眞也 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 講師 (50282702)
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研究分担者 |
丹下 健 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (20179922)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放射性セシウム / 林木 / スギ / 幹材 / 葉枯らし / 放射能低減 |
研究実績の概要 |
福島第一原子力発電所から放出された放射性物質が降下沈着した地域の森林において,スギなどの林木の幹材に含まれる放射性セシウムの動態を調べている。昨年度の調査林分とは別のスギ人工林に新たな調査地を設け,スギを複数本伐倒した。葉(針葉)や高さ別の幹の樹皮と辺材,心材に含まれる放射性セシウムを測定した。また採取した幹の一部を用いて木部内の放射性セシウムの存在形態を実験的に調べた。木部を機械的に圧縮して搾り出された水分には放射性セシウムが含まれており,木部内の放射性セシウムが少なからず可溶態で存在していることが示された。さらに幹丸太を送風乾燥器で乾燥すると,切口方向への水分の移動に伴って放射性セシウムの分布が変化することや,切口を被覆して水分の移動方向を規制した実験により,とくに軸方向に放射性セシウムが移動しやすいことなどが明らかになってきた。伐倒調査によって幹材の放射能を計測する際に,切口からの乾燥に伴なう放射能の変化に留意すべきであることを意味する。 幹材の自然乾燥法として,伐倒後すぐに枝を切らずに林床にしばらく置いておくことで葉からの蒸散により幹材の水を徐々に減らす「葉枯らし」があるが,葉枯らしによって放射性セシウムも枝葉に移動し幹材内の放射能を低減できないかの実証実験も開始した。供試木以外は伐倒せず日照の少ない林内での「葉枯らし」になったためか,伐倒4ヶ月後の測定では放射能の低減効果は見出せなかった。次年度以降も継続的に測定をおこない,幹材の乾燥経過や,水分の移動と放射能分布の変化を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた林内の放射線源分布の調査は,予定していた装置の変更もあって,中断している。一方で木部内の水分の移動に伴って放射性セシウムも部分的には移動しうることを実験的に示すことに成功した。さらにその成果を林地での応用を念頭においた調査も開始した。
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今後の研究の推進方策 |
実地調査は当初計画どおりに継続するが,木部内の水分の移動に伴なう放射性セシウムの移動について定量的な実験研究を重点的に進めるとともに,現実的な幹材内の放射性セシウムの低減方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
林内の放射線源分布調査を計画していたが,装置の変更が初年度にわかったため,別の調査方法を検討していたが,木部内の放射性セシウムの存在形態の解明の調査に進展が見られたため,その研究と応用法の検討を先に進めた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降に放射線源分布調査の方法を改めて検討し遂行する。
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