研究課題
本研究の目的は、福島第一原発の旧警戒区域内で6ヶ月から2年間被ばくした11頭の雄ウシにおける線量評価と継世代影響の解析から、大型畜産動物における長期外内部被ばくの影響を知る基盤を樹立し、福島畜産の復興や食の安全性評価に貢献することである。そのため、臓器別に放射性物質の同定と放射能の定量を行い、放射性物質の違いによる標的器官を見出す。さらに、経時的な継世代影響評価系の構築と遺伝的影響を明らかにし、未知の放射線被ばくに特異的なバイオマーカーを同定することにより継世代影響を評価する新技術を開発する。これまで、旧警戒区域内で安楽死処分されたウシ、ブタおよびその圏内に生息している野ネズミにおける生殖器官の組織学的解析と元素分布、および生殖細胞と次世代への遺伝的影響を解析することを目的として実施し、生殖細胞(精子)を採取・体外受精、凍結保存すると共に、沈着物質の同定と放射線量を測定した。さらに、2年間被ばくしたウシから採取した凍結精子をレシピエント牛に人工授精(AI)を実施した。現在、出産した仔牛は、性成熟に達するまで飼育している。今後は、除核したウシ成熟卵に、卵細胞質内精子注入法(ICSI)にて精子を顕微授精することにより、半数体の雄性単為発生胚を作製し、それを胚盤胞期胚まで培養する。これにより、一匹の被災牛由来精子から同一の遺伝情報を持つ精子核の複製、すなわち、成熟卵の細胞質特有の性質を利用した雄性ゲノムクローニング法により精子核を複製させる。その後、ICM細胞を培養することにより抽出したDNAを用いて解析する方法を確立する。
2: おおむね順調に進展している
同時に、DNAをSureSelect Bovine All Exon Capture Sequence (Agilent Technologies)を用いて染色体の全エクソン領域を濃縮し、次世代シーケンサー(illumine社 HiSeq機種)を用いて網羅的にシーケンスを実施する方法、並びに、取得した配列は、NCBIのBos Taurus UMD3.1バージョンのReferenceゲノム配列にマッピングし、スニップとインデル(挿入・欠損部位)の頻度・位置から、放射線影響による変異のある遺伝子を絞り込む方法も確立させつつあるため、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると評価する。
今後は、除核したウシ成熟卵に、卵細胞質内精子注入法(ICSI)にて精子を顕微授精することにより、半数体の雄性単為発生胚を作製し、それを胚盤胞期胚まで培養する。これにより、一匹の被災牛由来精子から同一の遺伝情報を持つ精子核の複製、すなわち、成熟卵の細胞質特有の性質を利用した雄性ゲノムクローニング法により精子核を複製させる。その後、ICM細胞を培養することにより抽出したDNAを用いて解析する方法を確立する。また、F1世代の仔牛は、性成熟に達するまで14ヶ月間飼育し、精子を採取・凍結保存する。
平成27年度は、実験に使用する消耗品費を最低限で抑えたため。
DNA抽出試薬、DNA解析費、抗体費など解析に関する費用および仔牛の解剖処理費に使用する計画である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
Journal of Radiation Research
巻: 56 ページ: 42-47
10.1093/jrr/rrv070