研究課題/領域番号 |
15K11952
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山城 秀昭 新潟大学, 自然科学系, 助教 (60612710)
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研究分担者 |
杉村 智史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 特任准教授 (00728454)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 福島原発事故 / 被災雄牛 / 被災雄牛由来子牛 / メタボローム解析 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究では、福島第一原発20km圏内の旧警戒区域内で2年間内外部被ばくした被災雄牛の精子を用いて、子牛を人工受精により産ませ、産まれた子牛の健康を評価するために血液の全代謝産物を網羅的に解析するメタボローム解析を実施した。 被災雄牛由来の1頭の雄子牛は、農学部附属牧場で平成27年8月に産まれ、平成28年9月に血液を採取した。対照に用いた同年齢の1頭の子牛の血液は、新潟県内の和牛農家から採血した。採血した血液は、抗凝固剤であるEDTAにて凝固反応を抑制し、速やかに遠心分離し、血球成分を沈殿させた上清を用いた。メタボローム解析は、キャピラリー電気泳動装置(capillary electrophoresis:CE)を飛行時間型質量分析 装置(time-of-flight mass spectrometry:TOFMS)に接続した分析装置を用いて、糖・アミノ酸・核酸・脂質などの代謝を構成するエネルギー代謝を解析した。 ウシ血漿2検体についてCE-TOFMASによるメタボローム解析を行った。HMT代謝物質ライブラリおよびknown-unknownライブラリに登録された物質のm/zおよびMTの値から104ピークに差が認められた。検出されたピークの代謝物質にもとづいて解糖系/糖新生、ペントースリン酸経路、クエン酸回路、尿素回路、プリン・ピリミジン代謝、補酵素代謝および各種アミノ酸代謝経路に分類した。その結果、対照の子牛と比較して被災牛由来子牛のATPが1.6倍の割合で高い値が検出された。一方、被災牛由来子牛の解糖系におけるG1P、G6P、3-PG、乳酸の生成割合は、対照の子牛と比較して低い値を示した。TCAサイクルにおけるクエン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸の比は、両者間で差が認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に実施した研究の成果は、福島県産の優良種雄牛の精子を用いて子牛を生産した場合においても、その子牛の全代謝産物に放射線の影響が認められる可能性は極めて低いという一つの科学的な根拠を示すことができた。そのため、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
DNA濃縮技術を用いた継世代エクソン領域解析および被災雄牛由来子牛における全代謝産物のメタボローム解析を継続して、それらの結果を論文にて発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、実験で使用する一般試薬と消耗品を最低限で抑制したため。
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次年度使用額の使用計画 |
一般試薬、消耗品および英文校閲と論文掲載料に使用する計画である。
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