本研究では、旧警戒区域内で6ヶ月および2年間被ばくした雄ウシと8頭の産子において全ゲノムエクソン領域の網羅的な変異を抽出した。その結果、NLRP9など9遺伝子への変異が認められたが、生命の維持に重要な役割を果たす遺伝子への変異は認められなかった。さらに、被災雄牛の精子を用いて人工受精を実施し、10ヶ月飼育した後に全代謝産物のメタボローム解析を行った。その結果、対照の子牛のそれらの値に比較して差は認められなかった。本研究の成果は、福島県産の優良種雄牛の精子を用いて子牛を生産した場合においても、その子牛への放射線の影響が認められる可能性は極めて低いという一つの科学的な根拠を示すことができた。
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