研究課題/領域番号 |
15K11961
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
久保 堅司 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター 農業放射線研究センター, 主任研究員 (20446470)
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研究分担者 |
二瓶 直登 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (50504065)
信濃 卓郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター 農業放射線研究センター, センター長 (20235542)
南山 泰宏 京都教育大学, 教育学部, 教授 (00463266)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放射性セシウム / カリウム / 畑作物 |
研究実績の概要 |
子実への放射性セシウムの蓄積性が異なるコムギ2品種を現地圃場試験等に供試し、作物への放射性セシウムの移行機作を解析した。また、両親品種の交配から由来した組換え自殖系統群を用い、子実への放射性セシウムの蓄積性の遺伝的な解析を行うための遺伝子地図の作成を進めた。作物への放射性セシウムの移行はセシウムと化学的な形態が類似するカリウムの土壌中濃度に影響を受けることが知られており、今年度は特に、土壌中の交換性カリ含量が異なる条件において両親品種の子実への放射性セシウムの移行程度を精査した。 方法として、2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故により放射性セシウムが降下した福島県内の現地圃場において、土壌の交換性カリ含量が4段階に異なる試験区を設け、両親品種の放射性セシウム蓄積への土壌の交換性カリ含量の影響を評価した。遺伝子地図の作成については、両親品種と組換え自殖系統群のDNAを抽出後、両品種で遺伝的多型が検出されるプライマーの探索と、多型が検出されたプライマーによる組換え自殖系統群の遺伝子型の判別を行った。 その結果、無カリ区では両親品種2と比較して両親品種1の方が子実への放射性セシウムの蓄積は少なかったが、それ以外の土壌の交換性カリ含量を高めた区では、両親品種1よりも両親品種2の方が子実への放射性セシウムの蓄積は少なかった。このことから、特定のカリ条件で発現する輸送体が両親間で異なっており、セシウムの蓄積性に違いが顕れている可能性が考えられた。栽培後の土壌の交換性カリ含量はいずれのカリレベルにおいても両親品種1よりも2の方が低くなっており、品種2はカリウムの要求量が高い品種であることが推察された。連鎖地図作成において、アンカーとなるSSRマーカーの遺伝子型の判別については、組換え自殖系統群においてさらに30マーカーのジェノタイピングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地圃場試験において、コムギの放射性セシウムの吸収・体内移行が土壌の交換性カリ含量に影響を受け、その程度は品種により異なることが示された。遺伝子地図の作成では、両親間で多型が認められるプライマーの特定と組換え自殖系統群の遺伝子型の判別が進展した。ラジオアイソトープ吸収試験では、放射性セシウムの吸収・体内移行に関する品種間差異が示され、本形質に影響を及ぼすカリレベルを精査した。
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今後の研究の推進方策 |
現地圃場試験により土壌の交換性カリ含量が放射性セシウムの蓄積性に影響を及ぼし、その程度が両親品種間で異なる点に着目し、現地圃場では反復試験により本現象の確認を実施しつつ、ラジオアイソトープ吸収試験により吸収・移行へのカリの影響を精査する。組換え自殖系統群は土壌の交換性カリ含量を制御した複数の栽培条件において、放射性セシウムの蓄積性を評価する。得られたデータは遺伝子地図に関する情報と統合し、放射性セシウムの吸収・移行性と関わる遺伝子座の検出を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、研究費を効率的に使用して発生した額である。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画に変更はなく、次年度使用額367,958円を含め、当所の予定どおりに計画を進めていく。
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