研究課題/領域番号 |
15K11969
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
佐藤 徹 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (50363776)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 政策評価 / 政策手法 / ロジックモデル / 評価指標 |
研究実績の概要 |
第1は政策手法(行政手段)からみた自治体施策・事業の分類基準を確定させた上で、現実の自治体の施策・事業等に適用し、必要に応じて分類基準を修正変更し、確立することが研究上の計画であった。政策の定型ないし類型に関する既往研究のレビューでは、当初は行政学や政策学の知見を参考に自治体の施策・事業の分類をめざしていたが、政策手法の類型化が進んでいる環境政策分野や行政法学上の知見、さらにプラクティカルな視点として行政評価実務での事業類型なども考慮に入れて、整理分析を進めた。 第2は第1の内容を踏まえながら、代表的な施策・事業を抽出することであった。本研究では、ロジックモデルの基本類型を導出することが第一の目的であるが、そのためにまずはロジックモデルの構成要素の核となる行政活動(アウトプット)にフォーカスし、詳細な分析を行うことにした。つぎに実際にロジックモデルを作成又は活用している自治体を明らかにするため、2016年12月から2017年1月にかけて、質問紙による「ロジックモデルの作成状況等に関する全国自治体調査」を実施した。さらに、ロジックモデルを作成公表している岩手県盛岡市へのインタビュー調査を2017年1月に行い、その作成に至る経緯や手法、現状と課題等について把握した。同市のロジックモデルは広範囲の政策分野にわたり作成されており、また一般にも公表されているため、実証分析の素材として適当であると判断し、分析用のデータセットを作成することにした。 第3は先行してロジックモデルを作成していたり、現在作成段階にある自治体の担当者等を招聘し、ロジックモデルの導入方策や課題等について議論を深めた(自治体政策経営研究会を2度開催)。また、これまでの研究知見を活かし、総務省や市町村アカデミーが主催する研修セミナーにおいて、行政職員向けにロジックモデルに関する講演と演習を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ロジックモデルの作成状況等に関する全国規模の自治体調査を行ったことに加えて、ロジックモデルの基本類型を実証的かつ定量的に分析するために必要なデータセットの入力作成にも多くの時間を要することになった。それゆえ、ロジックモデル及び評価指標の仮説構築の作業については未完の部分が残されている。 ただし、上記によって、より客観性が担保された科学的な分析ができることとなった。以上の点から、全体的な進捗状況としてはやや遅れていると自己評価したが、申請時点と比較して、より質の高い研究へと改良され、有益であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、第1にロジックモデルを実際に作成・公表している自治体の行政活動(アウトプット)の基本類型を抽出することである。第2に、行政活動(アウトプット)から最終成果(最終アウトカム)に至る多様な因果の配列を定量的に分析することによって、その代表的なパターンを導出することである。そのために、計量分析用のデータセットを早期に完成させることをめざす。 第3に代表的な政策分野を5つ程度(教育、子育て支援、地域産業、高齢者福祉、環境保全)選定した上で、あとで異なる政策間で比較可能なように、各政策分野における基本的なロジックモデルと評価指標の仮説を構築する。その際、ロジックモデルの要となる因果関係の根拠については、その言説となる関連文献の調査を十分に行う。評価指標については過去の適用事例などを参考に設定する。 第4にロジックモデル及び評価指標の仮説検証のためのインタビュー調査を行い、仮説の妥当性を検証する。具体的には、インタビュー対象候補を数団体程度選定することにしているが、その選定にあたっては、①団体の属性、②地理的条件、③調査協力の得られやすさ等を考慮する。インタビュー調査の結果をふまえ、仮説に含まれない要素や因果構造が発見された場合にはロジックモデルないし評価指標を修正する。 第5にロジックモデルの比較分析である。同じ政策手法(行政手段)であっても政策分野や実施主体によって異なったロジックモデルとなり得るかどうかを検証するため、ロジックモデルの因果構造を比較分析する。 以上の研究成果をもとに、学会及び学会誌などで発表や論文投稿を行う。さらに、行政関係者や研究者などが自由に使用できるように、「最終報告書」を作成・公表する。政策評価の実務にも反映できるように、行政関係者等を対象に、研究者も交えた「公開フォーラム」を開催する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究会に招聘した講師が謝金等を辞退されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
インタビュー調査に伴う費用に充当する。
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備考 |
高崎経済大学 佐藤徹研究室 http://www1.tcue.ac.jp/home1/tsato/
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