研究課題/領域番号 |
15K11969
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
佐藤 徹 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (50363776)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 政策評価 / 政策手法 / ロジックモデル / 評価指標 / 自治体 |
研究実績の概要 |
研究実績の概要は、大きく次の3点である。 第1は、実際にロジックモデルを作成又は活用している自治体を明らかにするため2016年度末にかけて実施した「ロジックモデルの作成状況等に関する全国自治体調査」の結果をとりまとめ、日本評価学会春季大会(2017年5月)で報告したことである。また、これを発展させ、「わが国自治体におけるロジックモデルの普及実態の分析」『地域政策研究』(第20巻第1号、pp.1-14、2017年8月)、及び「自治体行政へのロジックモデルの導入戦略」『季刊 評価クォータリー』(第42号、pp.2-17、行政管理研究センター、2017年7月)の2論文を執筆した。 第2は、補助事業の目的をより精緻に達成するため、テキストマイニングといった計量的手法によってロジックモデルのパフォーマンス・ストーリーの分析を行い、ロジックモデルの基本類型の存在可能性について、日本評価学会全国大会(2017年12月)で報告した。あわせて、地方版総合戦略の施策等に設定されている評価指標(KPI)について、全国の都市自治体レベルを対象に収集整理した。 第3は、先駆的にロジックモデルを作成した自治体の担当者をゲストスピーカーとして招聘し、全国の自治体職員を対象とした自治体政策経営研究会を開催した(2017年10月、東京都内)。ここでは、ロジックモデルの導入方策や課題等について、活発な議論が行われたれた。さらに、これまでの研究知見を活かし、市町村アカデミー(市町村職員中央研修所)が主催する研修セミナーにおいて、行政職員(管理職および一般職)向けにロジックモデルと自治体の長期ビジョンや政策形成に関する講演と課題演習を2回行った(2017年7月及び2018年1・2月に実施)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ロジックモデルの基本類型の実証的探索のために、岩手県盛岡市のロジックモデルを素材として分析用データセットの作成を試みた。だが情報量が膨大で思いのほか時間を要した。また、ロジックモデルの仮説を検証するために必要な自治体との調整に時間を要したことなどから、当初の研究計画を見直した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、第1に2017年度に日本評価学会で報告した内容を発展させて、学術論文を執筆することである。ロジックモデルのデータセットを対象に、行政活動(アウトプット)から最終成果(最終アウトカム)に至る多様な因果の配列を定量的に分析することによって、パフォーマンス・ストーリーの代表的なパターンを導出することが中心的課題である。 第2に代表的な政策分野を5つ程度(教育、子育て支援、地域産業、高齢者福祉、環境保全)選定した上で、異なる政策分野間で比較可能なように、各政策分野における基本的なロジックモデルと評価指標の仮説を構築する。その際、ロジックモデルの要となる因果関係の根拠については、その言説となる関連文献の調査を十分に行う。評価指標については過去の適用事例などを参考に設定する。 第3にロジックモデル及び評価指標の仮説検証のためのインタビュー調査を行い、仮説の妥当性を検証する。具体的には、インタビュー対象候補を数団体程度選定することにしているが、その選定にあたっては、①団体の属性、②地理的条件、③調査協力の得られやすさ等を考慮する。インタビュー調査の結果をふまえ、仮説に含まれない要素や因果構造が発見された場合にはロジックモデルないし評価指標を修正する。 第4にロジックモデルの比較分析である。同じ政策手法(行政手段)であっても政策分野や実施主体によって異なったロジックモデルとなり得るかどうかを検証するため、ロジックモデルの因果構造を比較分析する。 以上の研究成果をもとに、学会報告や論文投稿を行う。さらに、行政関係者や研究者などに有用な報告書ないし書籍として取りまとめる。さらに、政策評価やマネジメントの実務にも反映できるように、行政関係者等を対象に研究者等も交えた「公開フォーラム」を開催する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ロジックモデルの分析用データセットの作成に多大な時間を要したこと、ロジックモデルの仮説を検証するために必要な自治体との調整に時間を要したことなどから、当初の研究計画を見直した。
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