2004年以降実施されたドイツの都市計画に関する住民投票の13事例を分析した。整理に際しては、住民投票の結果として、「A. 住民投票案の可決(行政計画案の否決)」、「B. 住民投票案の否決(行政計画案の可決)」、「C.住民投票の非成立」の3分類とし、さらにその後の行政の対応として、「1. 計画案の中止・凍結」、「2. 計画案の変更」、「3. 計画案の続行」の3分類を加えた。合計9つのマトリックスの中で本研究において最も注目すべきは「A-2」で、つまり住民投票によって行政計画案が否決され、その後行政が計画案の変更のために、住民とのワークショップ等合意形成を進めた事例である。 A-2には、「ミュンヘン市における高層建築の規制に関する住民投票(2004年)」、「ボン市におけるプール総合計画に関する住民投票(2017、18年)」等があるが、たまたま2019年には、住民投票によって否決されたボン市のプール総合計画を再検討するプログラムが行われたため、そのプロセスを現場で調査することとした。 本計画に関しては、すでに5年間住民、行政、議会の中で議論してきたが、住民投票によって否決されてしまったことを受けて、市議会は合意形成のための市民鑑定書の作成を専門機関に委託した。1年にわたる作業の中でも最も重要なプロセスが無作為抽出の市民100人を対象にした4日間のプラーヌングスツェレ(計画セル会議)であった。 住民投票はこれまでも述べてきたように、行政計画等に関して納得がいかない住民の意思表示の一つの方法であるが、それだけでは都市計画の変更は実現しない。その後、プラーヌングスツェレのような新たな合意形成の方法を行政と住民が共働実施することこそが、都市計画民主主義を実現する重要な手段であることを確信した。
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