研究課題/領域番号 |
15K11979
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
吉田 健三 青山学院大学, 経済学部, 教授 (80368844)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アメリカ / 所有権 / 国際機関 / 年金政策 / 規制 / 公的年金 / 社会保障年金 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「所有権」の構築という観点から、アメリカをはじめ日中欧の年金システムの発展過程を 分析し、その成立の条件、経済的な帰結および政策的論点を明らかにすることであった。 前年度は、OECD、EU、イギリスを訪問し、今年度はワシントンD.C.の世界銀行やIMFを訪問し、ヨーロッパや国際機関における年金規制の実態を通じて、「所有権」構築の実態を調査した。 その第一の成果は、国際機関における年金規制案の構造と特質を、「アメリカ化」という点から明らかにする論文である(吉田(2018))。これは前々年度の国際比較を土台に所有権の前提となる積立・運用規制その他について、世界的な動向を整理するものである。 また、年金「所有権」のモデル国として位置付けている、アメリカについて、その外枠となる公的年金の安定性に着目した研究をまとめた。これは、アメリカにおいてなぜ公的年金の個人勘定の導入が実施できなかったのか、を制度のデザインの国際比較の観点から明らかにするものである。年金システムにおける「所有権」化の経済・政治的条件について、逆説的に明らかにすることを意図している。(Kenzo Yoshida, (2017)) さらに、より包括的な観点から、日本の年金システム全体をとらえた「年金システム:市場経済と労使関係を基盤として」を編著の一部として出版した(木下・吉田・加藤(2017))。これは確定拠出年金を直接に取り扱ったものではないが、その周辺における制度、変更しない公的年金制度について、その課題や構造、さらにこれを支える(「所有権化しない」)論理の構造を扱ったものと言える。 伝統的な年金における資産運用および積立規制、また外縁となる公的年金の状況を抑えることで、今後、最も「所有権」の形に近い個人勘定をめぐる実態や、政策、その意義についてより具体的な研究に繋がるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は、概ね順調に進行している。しかし、年度末に予定していた、アメリカの近年の動向を再調査するための、アメリカ調査については、諸般の事情から実施することができず、研究期間の延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
夏季中に日程を確保し、昨年度予定していたアメリカ調査を実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査計画の変更のため。 使用額についてはほぼ全額、昨年度予定していたアメリカあるいはヨーロッパ現地調査に使用する計画である。
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