研究課題/領域番号 |
15K11981
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研究機関 | 明石工業高等専門学校 |
研究代表者 |
石田 祐 明石工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20455554)
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研究分担者 |
馬場 英朗 関西大学, 商学部, 准教授 (20555247)
石内 鉄平 明石工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90527772)
岡田 彩 金沢大学, その他部局等, 准教授 (30707360)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 災害 / 東日本大震災 / 復興政策 / NPO / 寄付 / ファンドレイジング / ソーシャル・メディア |
研究実績の概要 |
本研究では、災害発生後の政策展開がNPOの資金獲得に影響を与え、そのことに起因し、NPOによる公共サービス供給に影響が与えるのではないか、ということを明らかにするために、実証的にその分析に取り組んでいる。 初年度は、まず、基礎部分として、地域のNPOが平時の地域のニーズを支える活動を行うための寄付獲得の可能性について分析を行っている。次に、東日本大震災においてNPOが関与した、特にNPOという組織を特徴付ける固有の性格をもつ寄付について、全体のお金の流れや、NPOが支援活動の資金として寄付を獲得する手法とその成果を解明するために分析を行っている。そして、寄付とともに重要な財源である政府・行政からの資金に着目するために、NPOが東日本大震災からの救援および復興において、どのような政策や施策から資金を得たかについて整理を進めている。 本年度の研究から、テーマ型団体として位置付けられ組織化されるNPOと、地縁を基礎して形成される住民自治組織との間で、地域住民の中で支援者の性質が異なりうることが明らかとなっている(Ishida & Okuyama, 2015)。また、支援の依頼に対する反応として、前者は支援者数が後者に比べて少なくなる可能性はあるものの、一人当たりの支援金額については大きくなりうることが示されている。災害時に関してみれば、寄付は、義援金と活動支援金という2種類の形となって、家計(また企業)から拠出される。特に本研究に関連する後者については、NPOの活動資金となるものであり、その規模やお金の流れが、南埜・馬場(2015)によって明らかにされている。個別のNPOに着目すると、ソーシャル・メディアを平時から使用し、震災後も発信している団体がより有効に資金を調達できていることが明らかになっている(Okada, Ishida, and Yamauchi, 2017)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
災害からの復興においてNPOがどのように公共サービス供給を実施しているかという点に注目をし、政策、会計、ソーシャル・メディアなどのいくつかの側面から定量的なアプローチを中心に、ヒアリング調査も踏まえながら研究を進めている。 その研究の成果報告を学会発表および学術論文において行うことができている。また、国内に限らず、海外の学会およびジャーナルにおいてもその内容を共同研究者とともに発表することができている。データの整理について当初の予定よりも遅延しているが、収集方法については順調に確立に至りつつあるので、今後の研究においてそれを効率的に収集を行い、データの整理とともに分析を行うこととする。
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今後の研究の推進方策 |
災害関連政策がどのようにNPOの活動およびその活動の基盤となる資金や人材の獲得、その他の要素に影響を与えるかについて、引き続き多様な分析手法からアプローチを行う。特に政策については、政府および自治体からさまざまな種類で展開されているが、どこにNPOが関わっているかは、それぞれを確認しながら、順次整理していくほかない。情報を収集し、データの整理を行う。そのデータをもとに、NPOの資金あるいはミッションにどのような影響が及び、提供する公共サービスがどのように変化しうるかについて解明を進める。また、政府・行政の財源が一定とすると、災害復興に資金が投入されると、それ以外の分野の財源に影響しうる可能性もある。災害復興に携わらないNPOにはどのような影響が資金面において及び、そしてどのように公共サービス供給が変化しているか、あるいはする可能性があるかについても解明を行いたい。 これらの問題関心については、データで明らかにすることも重要であるが、それだけでは見えない部分も多くある。ヒアリング調査も定期的に行い、必要なデータを収集し、実践的な知見が得られる研究となるよう分析のフレームワークについても見直しつつ研究を推進する。得られた知見については実務者にフィードバックを行い、政策提言に寄与する議論を展開することにしたい。
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