研究課題
2016年度においては,前年度までに得られた理論的基盤(高階関数型確率的プログラムの GoI による状態機械への帰着)に立脚し,ここから2つの獲得目標(ハードウェア実装および静的解析アルゴリズム)に向けて,基礎的研究を積み重ね,相応の結果を得た.ハードウェア実装に向けては,GoI 抽象機械の特徴(消費メモリは多くない一方,計算過程に冗長性が多い)を受けて,これに対処すべく GoI に適切なショートカット機構を導入することを目的にサーベイと研究を行った.この方向性の研究の成果にはたとえばプログラミング言語分野の旗艦国際会議で発表された [Dal Lago・Faggian・Valiron・由水,POPL’17] があるが,この成果を実際のハードウェア実装に応用するためには,特に FPGA 等のハードウェアについてさらなるサーベイが必要である.GoI によって高階関数を状態機械に帰着して得られる確率的状態機械の理論的研究についても,これを精力的に行った.たとえば理論計算機科学分野の旗艦国際会議で発表された [日野・小林・蓮尾・Jacobs, LICS’16] においては,(確率分岐等の)さまざまな計算効果について,それにより実現可能な述語変換子の数学的特徴づけを与えた.さらに,確率的状態機械の静的解析についても基礎的研究を行いさまざまな成果を得た.これには,Buechi オートマトンや parity オートマトンの受理言語に圏論的特徴づけを与えた成果 [卜部・清水・蓮尾, CONCUR’16] (並列システム分野のトップ国際会議で発表された)や,さまざまなシステムにおける活性検証手法の圏論的一般論についての成果 [卜部・原・蓮尾,LICS’17] が含まれる.特に後者の成果により確率的システムに対して新たな活性検証手法が得られつつあり,本研究の目標への展開が今後期待される.以上の成果全般について,関数型プログラミング言語分野における主要国際会議において招待講演を行った [蓮尾,FSCD’16].
2: おおむね順調に進展している
2つの獲得目標(ハードウェア実装・静的解析アルゴリズム)に対して着実な理論的知見を積み重ねており,これらの成果は複数の旗艦国際会議で発表されている.これらの成果を具体的な獲得目標に結実させるにあたり,本質を捉えた小規模なプロトタイプを作成し以後の大規模な研究発展の基礎とすることが,挑戦的な本研究における今後のカギとなる.
2つの獲得目標のうちハードウェア実装について,当該分野の専門技能を有する研究者との協働を模索する.
海外出張のための費用が先方負担となることが多かったゆえ.
海外の共同研究先との往来を主として効果的に執行を行う.
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Annals of Pure and Applied Logic
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group-mmm.org/~ichiro
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~naophiko/