研究実績の概要 |
本研究では研究代表者の提案している「劣線形時間パラダイム」の実証のための理論研究を行っている。2015年度の主な成果は以下の通りである。 (I) 複雑ネットワーク上の定数時間アルゴリズム:複雑ネットワークに対し、孤立クリーク(伊藤らの提案した概念)の分布の冪乗法則とその階層構造があることを用いたモデルがShigezumiらによって2011年に提案されている。それに基づきHierarchical Scale Free (HSF) という多重グラフのクラスを提案した。そしてそのクラスが超有限 (Hyperfinite) であることを証明し、それを利用すればNewman & Sohlerらが2013年に提案したアルゴリズムと同様の考え方を適用することで、「クラスHSFに属する多重グラフにおいては、任意の性質が定数時間で検査可能である」ことを示した。本結果を使うことで、多くのビッググラフデータの性質が、そのサイズとは無関係な定数時間で(少なくとも理論上は)検査可能であることになり、ビッグデータ時代の多くの問題を解決する手がかりとなるアルゴリズムである。本結果は国際会議に投稿中である。 (II) 一般化将棋問題の定数時間アルゴリズム:将棋盤を√n×√nとし、王将以外の駒をO(n)個に増やした一般化将棋問題が定数時間検査であることを証明した。本結果は国際会議The 12th International Symposium on Operational Research and Its Applications (ISORA 2015), Aug. 21--24, 2015, Luoyang, Chinaにおける招待講演で講演し、特集号の電子ジャーナルIET digital libraryへ採録された。本結果はチェスや中国象棋など類似の問題にも拡張可能である。 (III) ケーキ分割問題を劣線形時間で解く枠組みを与え、その下でのアルゴリズムを提案した。本結果は国際会議The 8th International Conference on Fun with Algorithms (FUN 2016), June 8--10, 2016, La Maddalena, Italy に採録が決定した。
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