研究課題/領域番号 |
15K11985
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
伊藤 大雄 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (50283487)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 定数時間アルゴリズム / 性質検査 / 複雑ネットワーク / 階層構造 / 計算複雑さ / ボードパズル |
研究実績の概要 |
本研究では研究代表者の提案している「劣線形時間パラダイム」の実証のための理論研究を行っている。2017年度の主な成果は以下の通りである。 (I) 複雑ネットワーク上の定数時間アルゴリズム:研究代表者は複雑ネットワークには階層性があり、それを利用することで高速な定数時間アルゴリズムが得られると考えている。研究代表者が[ESA2016]で発表したクラスHSF (Hierarchical Scale Free)はその理論に基づく成果であるが、過去に階層性に基づく複雑ネットワークのモデルが(研究代表者以外によって)いくつか提案されている([Dorogovtsev, 2011], [Barabasi, 2001], [Ravasz, 2002]など)。今年度は、これらのモデルがすべて超有限性を備えていることを証明することができた。これらが冪乗法則を満たしていることはそれぞれの提案者によって既に証明されているので、伊藤の[ESA2016]の結果を利用すれば、これらのモデルにおいて、任意の性質が定数時間検査可能であることになる。本結果は現在対外発表準備中である。 (II) 一般化ボードパズル:図形のパッキングパズルである「ポリオミノ」と、碁盤目のボードをマス目に与えられた数値に基づいて規則を満たすように長方形の領域に区切るパズル「四角に切れ」の両者に対し、定数時間アルゴリズムを与えた。ポリオミノに関しては国際会議JCDCG^3 2017で発表し、その後フルペーパーをジャーナルに投稿中である。後者に関しては対外発表準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2016年度の段階で、複雑ネットワークのモデルHSFの提案とそれに対する万能定数時間アルゴリズムの提案を行うことができた。さらに過去に対案された多くの複雑ネットワークのモデルに対しても、その万能定数時間アルゴリズムが適用できるという結果を2017年度に得ており、この一連の結果は画期的なものであると考えている。この成果は極めて重要であり、当初の計画を大幅に超えている。
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今後の研究の推進方策 |
クラスHSFを、これまでに提案されている、階層性に基づく複雑ネットワークのモデル([Dorogovtsev, 2011], [Barabasi, 2001], [Ravasz, 2002]など)を含むさらに広いクラスに拡張する。理論的にはこれらのORをとればもちろんその条件を満たすが、それらを自然に含み、十分ランダム性を持つクラスを作ることができれば、実際の複雑ネットワークの多くを包含する有用なクラスが提案できると考えている。また、一般化囲碁問題や一般化ボードゲーム、パズルの定数時間アルゴリズムなどの研究も行う。今後は、他の定数時間検査可能な問題を明らかにすると共に、定数時間検査不可能なボードパズルの発見も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度になって、これまで提案されていた複雑ネットワークのモデルの多くに共通する重要な性質を見つけた(「研究実績の概要」参照)。この結果により、多くの既存の複雑ネットワークのモデルを含む広いグラフクラスに対して定数時間アルゴリズムが適用可能であることが理論的に証明される。これは予想外の重要な成果であり、この研究の国際会議発表と論文化のために研究期間を延長したい。
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