研究実績の概要 |
本研究では研究代表者の提案している「劣線形時間パラダイム」の実証のための理論研究を行っている。2018年度の主な成果は以下の通りである。 (I) データを徐々に読み込みながら徐々に精度の高い解を求めていく「漸進型アルゴリズム (progressive algorithm)」を研究代表者は提案しており、その構築技法の研究を行なっている。2018年度は、「定数時間アルゴリズム」と「全てのデータを読み込む線形以上の計算時間のアルゴリズム」の両者が存在する任意の問題に対し、オーダの意味での各々の計算時間を悪化させることなく、両者を円滑に繋げる漸進型アルゴリズムが構築できることを証明した。これは片側誤り、両側誤りどちらにも適用可能であり、また本技法はグラフに限らず、どのような対象、モデルに対しても適用可能であると考えられ、非常に一般性のある結果である。本結果は現在対外発表準備中である。(II) 研究代表者は複雑ネットワークには階層性があり、それを利用することで高速な定数時間アルゴリズムが得られると考えている。研究代表者が[ESA2016]で発表したクラスHSF (Hierarchical Scale Free)はその理論に基づく成果であるが、過去に階層性に基づく複雑ネットワークのモデルが(研究代表者以外によって)いくつか提案されている([Dorogovtsev, 2011], [Barabasi, 2001], [Ravasz, 2002]など)。これらによって得られる任意のグラフ上の任意の性質が定数時間検査可能であることを2018年12月のコンピュテーション研究会(電子情報通信学会)で発表した。(III) 一般化将棋、チェス、シャンチー(中国象棋)などの指数時間完全問題が定数時間検査可能であることを論文化し、受理された(2019年出版予定)。
|