研究課題/領域番号 |
15K11987
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山下 雅史 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (00135419)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自律分散ロボット / 人工分散システム / 自然分散システム / 自己組織化 |
研究実績の概要 |
生体分子の機能発現,分散ロボットの相互位置制御,LANの資源管理,人間社会の選挙など,広範な領域の問題から領域固有の事由を捨象し,内在する分散計算構造に着目すると,合意形成問題が共通して出現する.この事実に着目し,巨大分散システムを分散計算能力の観点から統一的に理解すること,すなわち,異なるモデル(仮定)の下で構築される分散計算理論の間の関係を統一的に理解することが本研究の目的である.たとえば,識別子や記憶を持たない構成要素から構成され,不安定なゆらぎの下で働く自然分散システムが豊富に有する自律性を,はるかに有利な条件の下で働く人工分散システムに付与することが困難である根源的理由を理解することが研究課題であった.この問題を自己組織化能力を対象として考察した.すなわち,無限視野の2次元ユークリッド空間上のロボットにおいては,(1)匿名,無記憶,非同期なロボットの自己組織化能力は匿名,有記憶,完全同期なロボットの自己組織化能力と変わらない,(2)匿名,無記憶なロボットアルゴリズムは自己安定性を持つ,そして(3)ランダム性は匿名ロボットの持つ限界を除去することが証明できた.従って,匿名性,無記憶性,ゆらぎなどの天然分散システムの弱点と考えられていた要因が,自律性の獲得のために重要な役割を果たしていることが理解できた.(2)は1999年の初期の結果であり,(3)は基本的には2014年度の結果であるが,(1)は2015年度にSIAM J.Computing誌から出版した.これによって,無限視野の2次元ユークリッド空間上のロボットの組織化問題は一応の解決を得た.我々の次の目的は,有限視野の3次元空間上のロボットの組織化問題である.有限視野の2次元空間上のロボットの組織化問題と無限視野の3次元空間上のロボットの組織化問題の検討を始めており,部分的な成果をDISCなどの国際会議で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上で述べたように結果をすでに発表しつつある.
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今後の研究の推進方策 |
上で述べたように,有限視野の3次元ユークリッド空間上のロボットの組織化問題を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度得られた結果の多くは国際会議での採択が期待される.本年度内には採択に至らなかったものの,既に国際会議等へ投稿を行っているものもあり,来年度には採択,口頭発表が見込まれるため,海外渡航費用などを次年度に繰り越す.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度られた結果が国際会議での採択がほぼ確実であると見込まれるため,主に国際会議参加のための海外渡航費用,参加費等に充当する.
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