時空間データを解析する確率モデルとして定常確率場がある。確率場のパラメータは一般にベクトルであり、1次元すなわちスカラーで時点を表す場合は時系列に対するモデル、2次元で第1成分が経度、第2成分が緯度、さらに3次元になり第3成分が高さの場合は空間データに対するモデル、さらに4次元になり第4成分が時点の場合は時空間データに対するモデルになる。定常確率場とは確率場の中で、各地点(各時点)における観測値を確率変数の実現値と見なした場合、それが地点(時点)に依存せず一定であり、2つの異なった地点(時点)の観測値間の共分散が地点(時点)のベクトル差のみに依存する確率場である。定常確率場にたいしてさまざまなパラメトリックモデルが提案されている。本研究では特定のパラメトリックモデルが妥当か否かの統計的検定を行う際に、観測値のフーリエ変換に基づく新たな検定統計量を提案した。この検定統計量はピリオドグラムとよばれる各周波数におけるフーリエ変換の2乗をカーネル関数によって平滑化した統計量である。優れた点は観測地点(時点)がランダムで一様分布に従うとき、帰無仮説すなわち想定されたパラメトリックモデルが正しいという仮説の下ではその漸近期待値と分散がカーネル関数の積分のみに依存し他の未知の量には依存しないという実用上も有用なことである。現在確認中であるが漸近分布も正規分布に従うと予想される。またピリオドグラムの漸近分散、異なった周波数におけるピリオドグラムの漸近共分散は、定常過程において等間隔で観測された時系列データのピリオドグラムのそれと同じ性質をもち、定常過程において既に確立されているピリオドグラムに基づいたブートストラップ法の理論的正当性が同様に成立することが予想される。
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