研究課題/領域番号 |
15K11995
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
前園 宜彦 九州大学, 数理学研究院, 教授 (30173701)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ノンパラメトリック / ハザード関数 / 生存時間解析 / カーネル型統計量 / 平均二乗誤差 / 漸近理論 / 密度比 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究実績を踏まえて、28年度はカーネル法に基づく高精度推測法の開発とその有用性の検証を行い、以下の研究成果が得られた。 1.カーネル法を利用した密度比推定量の直接型推定量の漸近理論を構築し、その有効性を理論的に示した。またカーネル型分布関数推定量についての積分で表現される推定量を提案し、漸近平均二乗誤差を求めるとともにその有効性をシミュレーションで検証した。2.有界なサポートを持つ確率密度関数について、従来提案されている推定量を漸近平均二乗誤差の意味で改善する統計量を考案し、その性質をシミュレーションにより検証した。3.生存時間解析においてリスクを計る重要な尺度であるハザード関数のノンパラメトリック推定について、経験分布関数についての積分で与えられる直接型推定量を構成し、その理論的性質を明らかにした。4.統計的リサンプリング法のカーネル型推定量への適用を研究し、ジャックナイフ法の密度関数推定に直接適用するのは問題があることを理論的に明らかにした。同時に分布関数のカーネル型推定量への適用は有効に働くことを示した。5.非負性を保つ密度関数の推定法についてこれまで提案されている方法との組み合わせを考察し、その性質を求めた。6.カーネル型確率点推定の新しい方法を提案し、これまでに提案されている推定量と比較した。この新しい推定量は陽な表現で与えられるもので、直観的に受け入れやすいものになっている。また有効性をシミュレーションで検証し、従来の方法と遜色ないことを確認した。 これらの成果は現在2本の論文を改訂中で、他の成果も国際誌に投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究成果をさらに発展させるとともに、本年度はカーネル型推定量に対して新たな視点から有効な方法を発見することができた。また密度関数のサポートが非負の半直線のときにおこる境界バイアス問題に対して、従来の手法を改善する推定量の構成にも成功している。カーネル法の境界バイアスの問題は多くの研究者によって取り組まれているが、本研究で構成したものはそれらの研究で得られた結果を改善しており、この分野における他の研究への波及効果は大きいものと思われる。この成果をなるべく早く公開できるように現在投稿準備をしている。またハザード関数についての直接型推定量の構成にも成功しており、これは世界に先駆けてものであり、今後の生存時間解析、金融工学におけるリスク管理等への応用が期待されるものである。このように本年度においては、世界に先駆けての研究成果をあげることに成功している。このことから本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、いくつかの新しいカーネル型推定量の構成に成功し、その漸近的な性質を明らかにしてきた。これからもカーネル法による新たな高精度推測法の研究を遂行しながら、これまでに得られた結果のレビューを受けるために各種学会やシンポジウムで発表する。そのうえで、国際誌に研究成果を投稿し研究成果の社会への還元を目指していく。具体的にはカーネル型推定量に対する世界での研究状況を精査し、そのうえでこれまでに得られた成果の位置づけを明確にして今後の研究計画を立てる。またこれまでに構成した新しい推定量を実データに対する適用を行い、そのうえで生じる問題の解決を図る。またカーネル法による推測では高次漸近理論の構築はまだ不完全な状況にあるので、高精度推測法の基礎となる高次漸近理論の構成とその理論的な性質を明らかにすることを目指す。本研究の最終年度にあたるので、得られた成果の論文公開による社会への還元を中心に研究を遂行していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外の研究者に研究成果のレビューをしてもらうために外国出張を予定して研究費を残しておいたが、さらなる研究の進展後の出張が適当であると判断して取り止めたために次年度への繰越金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費と合わせて外国出張の費用として使用する予定である。
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