本研究では、日本人の日常生活に定着した人びとの環境配慮行動の形成メカニズムについて、環境配慮行動のパターンと形成過程の理論的な整理、行動モデルの定式化及び実際の調査により収集したデータに基づいた環境配慮行動モデリングを行うことによって解明するとともに、環境配慮行動の影響要因の特定ならびに新たな環境教育枠組に有用な情報の抽出を中心に研究活動を推進してきた。本研究は、調査データに基づいて環境配慮行動メカニズムを計量的に解明することを中心に、行動を予測する方法論を模索してきた。最終年度の主な研究実績として以下のものを挙げることができる。 (1)「意識-信念-規範」理論及び「環境配慮行動ジレンマ」に基づいて環境配慮行動メカニズムと影響要因を論理的に明らかにした。環境問題を空間的(身近・地域・国・地球)と時間的(過去・現在・将来)視点から捉え、人びとの環境意識が日常生活での環境配慮行動にどのように影響するかを分析するための枠組を構築した。 (2)環境配慮行動モデリング及びパラメータの同定を行うための新たな現地調査を実施した。異なるスケールの環境問題に対する意識と代表的な環境配慮行動(エコ商品購入、リサイクル、節水、省エネ、公共交通機関利用、レジ袋持参など)との関係を調査票に取り入れ、東京都在住の成人男女519名を対象に郵送調査によりデータ収集を実施した。 (3)行動予測モデルを用いて、環境への配慮に影響を与えうる人口統計学的属性及び心理的・社会的要因の働きを計量的に評価した。環境配慮行動の種類により、回答者の実施頻度、実施の目的及び阻害要因は異なっていることが明かになった。これにより、環境意識と環境配慮行動との関係について、全体的な状況分析に留まらず各々の行動の影響要因を慎重に分析する課題が明らかになった。
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