研究課題/領域番号 |
15K12005
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
米田 友洋 国立情報学研究所, アーキテクチャ科学研究系, 教授 (30182851)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 非同期式回路 / 遷移型 / 設計手法 / 新フリップフロップ / NoCルータ / Verilogシミュレーション |
研究実績の概要 |
遷移型非同期式回路は,要求・応答信号の,レベルではなく遷移(立ち上がり,立ち下がり)を用いるため,レベルを0に戻す休止相が必要なく,高速な回路が実現できるが,設計が難しく,その長所を活かすには非常に高い専門知識を必要とする.本研究では,複数のクロック入力を持つ,新しいフリップフロップを用いることで,遷移型制御回路のテンプレートを構築し,特別な専門知識なしに,容易に遷移型非同期式回路を実現することを可能とする,まったく新しい設計手法について検討する.本年度は,まず従来手法で設計した遷移型非同期式NoCルータを解析し,その制御回路を,複数のクロック信号線,および,複数の動作エッジを持つ新しいフリップフロップを用いて再設計し,テンプレート化に必要な構造を見つけ出す作業を行った.同時に,そのような設計手法を用いた場合,性能・面積・消費電力にどのような影響が生じるかを,130nmプロセスを用いて解析を行っているところである.これは,新フリップフロップのセルレベル設計を行い,SPICEシミュレーションにより各種パラメータ抽出を行った結果をVerilogシミュレーションに反映させたものに基づいている.現在までの解析結果では,(1) 性能は,従来複数のゲートで構成されていた回路がシンプルな新フリップフロップ等で置き換わるため,やや向上している,(2) 面積・消費電力は若干増加するが,制御回路自体の占める割合が小さいため,NoCルータ全体で見た場合の増加率はわずかである,ということがわかっている. 一方,新フリップフロップに基づく制御回路を生成するための記述言語として,まずVerilog系の記述言語に変換可能なものについて検討し,上記の設計に用いることで,その有効性を検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NoCルータに,新フリップフロップに基づく新しい制御回路設計手法を適用し,提案するアイデアに基づく設計手法を評価する計画は順調に進んでいる.これにより,テンプレート化に必要な構造が明らかになりつつある.一般化するところまでには,まだやや時間を要するが,来年度に計画している記述言語の検討の一部については,先行して今年度に行うことができた.新フリップフロップのセルレベル設計についてもかなり進んでおり,比較・評価が可能な状態となっている.このことから,おおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
NoCルータの設計事例による評価・比較を完了した後,テンプレートの一般化とツール化を中心に,計画通りに進める予定である.テンプレートの一般化のために,NoCルータ以外の回路,例えば,研究代表者らが今まで設計に関わってきた,非同期式プロセッサ,線形連立方程式ソルバ,セキュリティパターンマッチングアクセラレータなどにも提案手法を適用することを検討している.また,そのテンプレートにより,表現できる遷移型非同期式回路のクラスについても,できれば形式的に検討したい. ツール化に関しては,新フリップフロップに関する記述が可能となるような,Verilog系記述の拡張形を検討し,それから新フリップフロップを含む回路を合成できるような変換ツールを構築する予定である.
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