研究課題/領域番号 |
15K12010
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
上田 和紀 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10257206)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | プログラミング言語 / サイバーフィジカルシステム / ハイブリッドシステム / 制約プログラミング / 並行プログラミング |
研究実績の概要 |
時間を含む連続量を的確に表現するプログラミング言語の確立のために,第1年度に引き続き,研究代表者が開発を進めてきたハイブリッドシステムモデリング言語HydLaと,研究協力者Walid Taha教授(Halmstad大学,スウェーデン)のAcumen言語を軸とする検討を行った。その一環として,2016年11~12月および2017年3月にTaha教授のグループを訪問して共同研究を実施した。 1. HydLaの統一原理である制約概念は本研究の目標言語の設計指針ともなるが,後者に必要となる計算効率の観点の導入法を検討した。HydLaとAcumenとの違いの一つが微分代数方程式を許容するか否かである点に着目し,微分方程式のみを許容するHydLaサブセットと,そのAcumentとの関連の検討を進めた。 2. HydLaが他のハイブリッドシステム記述体系と異なる点に,superdense timeの概念を持たないことがあるが,制約概念に基づくHydLaでは通常の時間概念の下でも同等のモデル記述力があることを,例題記述を通じて確認した。 3. 制約言語の特徴は変数間の依存関係が狭義半順序になるとは限らないことだが,これはプログラムの挙動の理解を困難にする一因ともなっている。そこで,制約プログラムの依存解析について,例題の蓄積の進んでいるHydLaをベースに検討を進めた。 4. モデリング言語が検証を重要な用途にもち,計算結果の精度保証が必要となるのに対し,プログラミング言語では処理系の計算誤差を許容することも必要となる。この場合の正当性概念の確立に向けて,ハイブリッドシステムにおけるconformance概念の調査を進めた。 5. 実用言語にとってはデータの構造化機能が重要である。制約概念を実数領域だけでなくデータ構造領域にも適用することで,データ構造概念を自然に導入する可能性について検討を始めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標とする言語のデザインスペースが広大であるため,研究はいまだ探索的であるものの,徐々に方向性が得られつつある。具体的には,「目標とする言語は制約言語でありかつ並行言語である」という当初の作業仮説に準拠しつつ,記述可能な制約のクラスを求解可能性や求解効率の観点から適切に制限すること,逆にデータ構造化の観点から適切に拡張すること,などの方針が明らかになってきた。また,HydLa,Acumen,本研究の目標言語などの間の相互変換技術とその基盤をなす理論を整備しつつ,言語の階層を構築することが有用であるという見通しもついてきた。
|
今後の研究の推進方策 |
新たなプログラミング言語の検討の推進には集中討議が大変重要であり,最終年度も共同研究や合宿の機会を設ける予定である。具体的なプログラミング言語の確立が最終目標ではあるが,研究の進捗状況を勘案すると,計算原理および意味論の両面における基本概念の確立と正当化,および既存言語との(変換技術等に基づく)関係づけを優先項目とするのが適切である。関係づけの一つの手段として,広義の型体系も重要となると予想する。設計の正当化の手段としては,ベンチマーク例題の記述実験を中心に進める予定である。言語機能については,今年度の成果概要に述べた諸側面に加え,最適化(目的関数最小化)のための機能の検討も行いたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
海外共同研究先(スウェーデン)への訪問のうちの1回について、旅費宿泊費が全額先方負担となったため、余剰が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究補助者の雇用および検討合宿の開催に充てる予定である。
|