研究課題/領域番号 |
15K12019
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 弘純 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (80314409)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ビル管理システム / センシング / 行動把握 |
研究実績の概要 |
原子力発電所の長期停止や火力発電用燃料費の高騰,景気上昇による需要増などにより,電力需給の更なるひっ迫が予想される.特にオフィスビルや商業施設におけるエネルギー消費の約70%を占める照明や空調の省エネ化は喫緊の課題である.しかし,東京都がオフィスビル等に対して実施したアンケートにおいて「節電のために投資する場合もその投資額を抑制し,比較的短期に回収できることが必要」といった回答がみられるように,厳しい経済状況で省エネルギーにかけるインフラ投資額にも費用対効果が求められていることもうかがえる.これに対し,本研究では,オフィスの照明や空調の省エネルギー化を,高価なビルエネルギー管理システム(BEMS)に頼ることなく,モバイル機器で低コストに実現する技術の創出に挑戦している.温度センサーとスマートフォンを連携させることで個人の快適度と温湿度の常時センシングを実現する.これにより,快適度・行動・環境・電力データを間欠的かつ低コストでクラウドサーバに集約するシステムを開発しつつある.また,網羅的なシミュレーションデータを併用することで,それらの低コストセンシングデータから,快適性を損なわない空調制御を予測する手法についても実施している.これは,様々な空調設定温度や風量,人の存在における温度変化シミュレーションをCFDソフトウェアを用いてあらかじめ実施し,その結果をデータセットとして蓄積しておき,実際の温度観測からその後の温度変化をそのデータを用いて予測する手法である.これを用いることで,最適な空調設定を管理者に示唆するシステムの実現を目指している.なお,センシングシステムについては商業施設と連携して温度センサーと人検知システムを仮設置し,実証実験を開始する体制を整えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定していたパーソナルセンシング技術および屋内の位置行動センシング技術については,研究代表者のこれまでの知見と保有技術に基づき,学術的に十分な成果創出ができたと考える.特に屋内の位置行動センシング技術については取り組みが全国紙で報道されており,社会還元の観点からも目標以上の成果を達成できていると自負する.また,人の存在をとらえるスマートポールも予定通りにプロトタイプ制作し,実在する商業ビル内の1000平米以上の空間に設置することで,データ取得と実証実験の準備体制を整えた.また今年度は予定していなかったビル空調制御との関係解析にも取り組み,新指標の検討を含めて環境工学の専門家との議論を重ねながら,空調制御における人の存在とセンシングデータの活用技術に関し一定の実現目途を得ている.
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今後の研究の推進方策 |
方法論はおおよそ確立に至りつつあり,今年度中の論文発表を目指す.また,もともとはキャンパス内での実証実験を予定していたが,実際の商業施設での実証実験の目途がつけられたことから,そういった注目度の高い施設においてより実践的な成果創出に挑戦する予定である.以上より平成28年度も順調に研究開発を遂行できると考える.
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