本研究は、1台のセンサノードの通信範囲内に膨大な数のセンサノードが存在する「高密度センサネットワーク」の実現に向けて、無線LANとの干渉を回避しながら高速にデータ収集を行う機構の実現を目的としている。無線LANとの干渉回避に向けては無線LANの通信状況に応じてZigBeeチャネルを変更する通信方式が必須となるため、H28年度は無線LANの通信状況を推定する手法を主に開発した。 具体的には、周囲の無線LAN APが使用しているチャネルを推定する手法を開発した。1つの無線LANチャネルが4つのZigBeeチャネルと重なっていることを利用し、複数のZigBeeチャネルで無線LANAPの信号強度を測定することでAPの動作チャネルを推定する。 しかしながら、この方式ではZigBee通信を中断してAPの信号強度を測定する必要がある。無線LANAPは通信状況に応じて自動的に使用チャネルを切り替えるため、通信を中断せずに無線LANAPのチャネルを推定したいという新たな研究課題に直面した。 そこで研究開発計画を変更し、ZigBee通信を行いながら周囲の無線LANからの干渉状況を推定する技術を開発した。無線LAN通信が4つのZigBeeチャネルに影響を及ぼすことに着目し、ZigBee通信において隣接するチャネルでの通信エラーの相関性を検証することで無線LANの使用チャネル及び通信状況を推定する。 計画を変更しての研究開発となったため、当初計画の新たな通信プロトコル全体の設計までは終了できなかったが、研究目的に向けた要素技術を構築できたと言える。新たに開発した技術はマルチチャネルデータ収集プロトコルと組み合わせることが可能である。本研究によって研究目的に掲げた「無線LANとの干渉を回避しながら高速にデータ収集を行う機構」を実現する基盤技術を概ね整えることができたと言える。
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