研究課題/領域番号 |
15K12029
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
河野 公一 東北工業大学, 工学部, 准教授 (70359553)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電子透かし / 3次元ヒストグラム / 公開鍵暗号方式 / 画質評価 / 印刷物 / ウェーブレット変換 / Javaアプリケーション |
研究実績の概要 |
1.3次元ヒストグラムを用いた電子透かしの埋め込み方法の改良 平成27年度に作成した,RGBを3次元ヒストグラムの軸として任意のデータを対話的に埋め込む方法を改良し,電子透かしを公開鍵方式で暗号化した後,特徴空間上のランダムな位置に埋め込めるようにした.従来法では,電子透かしを埋め込んだ位置さえ分かれば,第3者に電子透かしの情報を復元され,書き換えられる危険性があったが,本方法で暗号化された電子透かしは秘密鍵でしか復号できないため,電子透かしの位置と秘密鍵の両方を知ることができなければ,埋め込んだ電子透かしの復元や除去ができない.これは第3者による電子透かしの改ざんを防ぐことに繋がる重要な改良である. 2.電子透かし向け画質評価指標の開発 3次元ヒストグラムを用いた電子透かしの埋め込み方法において,画質評価に使用する新しい評価指標の提案を行った.画質評価にはPSNRとSSIMという指標がよく用いられているが,3次元ヒストグラムを用いた電子透かしの埋め込みにおいて,埋め込み頻度数が低い場合はPSNR,高い場合はSSIMの変化が大きく,電子透かしを埋め込んで画質評価を行う際には,埋め込み頻度数に応じてこれらの指標を切り替える必要があった.本研究により,従来のこれら2つの指標を乗じた新たな指標を導入することによって,単一の指標で画質を評価できることが分かった. 3.3次元ヒストグラムを用いた電子透かし自動埋め込みアプリケーションの開発 RGBを3次元ヒストグラムの3軸として,任意の電子透かしを自動的に埋め込むことができるアプリケーションをJava言語で開発した.これにより,電子透かしの自動埋め込みアプリケーションが多くの環境で利用できるようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Java言語で開発した電子透かしの埋め込みアプリケーションは,現時点ではRGBカラー画像に特化されており,このままでは他の特徴量を扱うことができず,入力画像の特徴量について汎用性をもたせる必要があること,また,電子透かしの埋め込み方法そのものについても印刷などの目的に応じた改良の余地があること,ウェーブレット変換を用いた電子透かしは線形変換に対する強度がRGBと比べると低いことなどの課題はあるが,現在までのところ,研究実施計画に基づいて進んでいる.一方で,グレースケール画像の印刷物に適した電子透かしの埋め込み方法については先行して実験を行い,今年度はグレースケール画像の印刷物に6ビット分の電子透かしを埋め込み,印刷・スキャン後にそれらを検出できることを確認している.以上のように,残された課題もあるが次年度の計画内容が一部実施済みであるため,上記の区分の評価とした.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として,印刷物に対して自動的に電子透かしを埋め込む方法の開発については,対象画像をグレースケール画像などに限定して問題を単純化することで,研究目的である電子透かしの埋め込みから印刷・スキャン後の検出までの一連の処理が行えるようにする.さらに,電子透かしの埋め込みアプリケーションについては,印刷物に対する埋め込みアルゴリズムの開発を優先的に進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はディジタルカメラを用いて画像の収集,データ整理,電子透かしの埋め込み作業を行う計画で進めてきたが,今年度の研究結果より,ディジタル画像に電子透かしを埋め込み,それを印刷した印刷物からスキャン後に電子透かしを検出すると,色によって色のずれの大きさが異なり,それらは一定ではないことが分かった.色のずれを少なくするためには,使用機器のカラーマッチングを事前に行うことが不可欠である.電子透かしを埋め込んだ印刷物のデータは本研究課題の研究目的にかかる重要な位置づけであるが,上記の理由によって,当初の計画よりも印刷物の実験に使用するデータの準備に時間を要することが判明したので,今年度は無理をせず,次年度に改めて実施することとしたため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は使用機器のカラーマッチングを行った上で印刷物の実験に使用するデータ(電子透かしを埋め込んだディジタル画像と印刷物)の準備を行う計画である.また,今年度までに収集済みのデータについても,印刷物向けに改良した埋め込み方法で電子透かしを埋め込んだデータを作成していく計画である.
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