研究実績の概要 |
本研究では,ディジタル画像に電子透かしを埋め込み,印刷・スキャンした後に電子透かしを検出することを目的として,3次元ヒストグラムを用いた電子透かしの埋め込み方法を開発した.今年度は,電子透かしを埋め込んだ画像の印刷物から電子透かしを検出する方法の開発を目標とした.グレースケール画像のウェーブレット変換から得られる4つの周波数成分(LL,HL,LH,HH)のうち,高周波側の3つの成分(HL,LH,HH)を用いて3次元ヒストグラムを構成することにより,電子透かしを埋め込んだ画像から印刷後にも電子透かしが検出できることを確認した.また,著作者に関する情報(任意のデータ)をバイト列とみなし,1バイトを8ビットに分割した後,各ビットを0と1に対応する2種類の頻度数を持つ点として表現することにより,画像・音声・文字などの任意のデータを電子透かしの埋め込みに用いる3次元特徴空間上の点の集合に変換できるようにした.さらに,埋め込むデータを事前に公開鍵暗号方式で暗号化した後,変換後の点の集合を特徴空間上のランダムな位置に埋め込むことにより,電子透かしの位置と秘密鍵の両方を知る場合のみ,埋め込んだ電子透かしを復元できるように改良した.また,AndroidやPC向けに3次元ヒストグラムを用いた電子透かしの自動埋め込みアプリケーションの開発も行い,これらを用いて埋め込み前後の画質評価を行えるようにした.以上により,電子透かしとして任意のデータを暗号化した上でディジタル画像に埋め込み,それを印刷・スキャンした後に検出することが可能となり,ディジタル画像の著作権を保護し,不正な流出を抑制するための基盤を構築できた.
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