直交に配置した複数ディスプレイを用いた個人ビューア向け裸眼立体視システム開発に関して,以下の3点で進展をみた. ①提案システムの性能向上:前年度に開発済の基本システムに追加する誘目的な強調レンダリング手法として,ビューア自身の映像の立体表面への映り込みと簡易3次元音場合成の利用,さらに遮蔽立体を利用した両眼視差立体視のキャンセレーション効果の3点の実装し,その有効性を確認した.また,複数人同時利用に向けた表示コンテンツの歪度の最適化方策についても基本アルゴリズムを設計し,シミュレーションによる事前評価を実施し,その効果を検証している. ②裸眼立体視による没入度の定性的評価:視線追跡実験により,ビューアは隣接ディスプレイ境界の縁よりも,連続する立体表面にそって注視点をより頻度高く動かす傾向があることを確認した. ③適用可能コンテンツクラスの同定:ポップアップ効果が効果的な可視化の具体的なコンテンツとして,時系列多次元情報可視化技法TimeTubesと,複数音楽演奏家によるグルーブの視覚化メタファOrbitrailsの2点に着目し,その基本実装を完了したが,裸眼立体視による実評価は今後の課題として残されている. 最後に本研究の総括として,ビューアの視点追跡を利用してアナモルフォシスの実時間誘導を行う本システムを,SAM(Smart Ambient Media;知的環境メディア)の典型例として捉え直し,関連する他の応用システムとの関連性や相互運用性について,総合的考察を加えた.
|