研究課題/領域番号 |
15K12046
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
岡林 春雄 山梨大学, 総合研究部, 教授 (40177069)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生体信号・指尖脈波 / ゆらぎ・リズム / 同期現象 / 関わり数理モデル |
研究実績の概要 |
生きているシステムにはリズムがあり(郡・森田、2011他)、人間も生体信号のリズムを利用しながら人間関係を作っているのではないか、そのリズムには安定性と応答性という特徴があり、いわば安定したリズムにゆらぎが加わることによって、他者という別の振動子と関係し合い心的同期現象(共感と呼ばれるような)が起こるのではないかと仮定した。 まず、人間の生体信号・指尖脈波を測定し、ターケンス処理を加えることによって状態空間上にアトラクタを描き、人間の生体信号の動きをとらえた。その結果、人間は各人、固有のリズムをもっているのだが、そのリズムは固定したものではなくゆらぎをもっており、そのゆらぎをともなったリズムによって他者(周囲)への応答が可能になっているのだと考えられる。 人間関係の典型的な特徴が表出される会話場面において、相互作用のなかで、相手からの言葉や情報はすべてストレッサーであり(ストレッサー感知の指標は生体信号・指尖脈波の高周波HFと低周波LFのパワー比で表わされる)、それに対する応力が応答性と言われているものである。HF成分は副交感神経が活性化していることを示し、LF成分は交感神経ならびに副交感神経の活性化を反映していると考えられるので、LF/HFまたは、LF/(LF+HF) の指標の有効性を検討している。また、ゆらぎが応答性を示していると考えられ、そのゆらぎを定量的に示したいという要求から導入されたのがリアプノフ指数(Lyapunov exponent:力学系においてごく接近した軌道が離れていく度合いを表す量)である。とくに、最大リアプノフ指数の有効性を検討している。 ここから、他者とのリズムが共鳴・同期する(または、しない)ことにより、人間関係という心理社会的な気分・感情状態を生み出しているのかを検討しており、最終的には関わり数理モデルを構築したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
倫理審査を通し、規定に基づき、会話実験(統制条件としての安静場面を含み)を実施した。二者の会話場面における生体信号等のデータは収集できたので、データ解析にかかっている。人間の心理社会的なレベルでの気分・感情データもPOMS(Profile of Mood States)で収集した。海外の文献では、会話時の視線の動きが人間関係の要因になっているのではないかという指摘もあるので本研究でも会話時の視線データをとったのだが、日本人の場合、視線の動きは人間関係の大きな要因にはならないようである。関わり数理モデルを構築するにあたって、視線を変数として組み入れるのかどうか、もう少し検討したい。また、生体信号・指尖脈波のデータがこれまで考えてきた数式に必ずしもフィットしていないので、現在、さらに精査にかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
収集したデータの解析を行いながら、国際会議を中心に発表し、内外の研究者とディスカッションしながら分析、理解を深めたい。現在の解析の範囲では、とくに、生体信号のグローバルなところでは二者間のリズムは明確な特徴を示してはいない。二者の生体信号は、「単に話をしている」状態では同期現象は起こらないが、心的作用が相互作用をもちだせば引き込み現象、すなわち、同期現象が起こってくるものと考えられるので、その心的状態の変化(phase shift)を慎重にとらえながら、生体信号の高周波と低周波のパワー比(LF/HF, LF/(LF+HF))、最大リアプノフ指数を指標として、研究目的を完遂したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
パリ等で起こったテロ(2015年)によってヨーロッパ、中東の情勢が不安定だと判断し、国際会議への参加を半年ほど遅らせることとした。そのため、国際会議関連への支払い(航空運賃を含む)が2016年度にずれ込んだことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
国際会議(ICPS 18th: Dubai, UAE)に9月出席する予定である。時期をずらしただけで、基本的な計画は変わっていない。当初計画通りに進める。
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備考 |
Grants-in-Aid for Scientific Research OKABAYASHI Lab.
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