研究実績の概要 |
会話をしている二者が相互理解するということは,二者の話の内容がかみ合い,それと同時に感覚的にも通じ合えている状態だと考えられる。話がかみ合っているかどうかは,会話の内容分析から明らかになる。そして,感覚的に通じ合えている,相互に相手のことを理解しているということを示すのは,お互いを見る目(相互注視)で示されることが従来の研究からわかっており,本研究でも相互注視が測定された。会話の内容から話がかみ合っており,なおかつ,相互注視が多かった二者を抽出し,解析したところ,その二者の生体信号(指尖脈波)の交差相関は,他の人たちの交差相関に比べて明らかに高かった。したがって,相互理解に至る会話においては,二者の生体信号は相関の高いリズムを示しており,同期していることが示唆された。 その同期している二者の生体リズムは,正弦関数にあてはまった。Hilbert変換後のsin・fit式は次の通りである。 f(x)=-0.04+121.18 sin(π×(x-9.92)/9.20) f(x)=-0.04+180.96 sin(π×(x+133.88)/14.96) これらの式は,同期相転移を示したWinfree (2001),ならびに,そこから発展させ,相互作用の形を振動子間の位相差だけで決まる正弦関数で示した蔵本モデル(Kuramoto, 1984)の指摘と矛盾せず,上記の定数項の一致,係数の近似という点で,相互理解ができなかった人たちの生体信号のリズム式とは異なっていた。したがって,人間の相互理解・意思疎通といった心理は,生体信号のリズム同期現象から示すことができ,その同期現象は二者の位相差を基にした正弦関数モデルで表現されることが明らかになった。
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