本計画は、動物の「自由」を構成する行動を自己・他者の理解や外部環境を操作する能力といった認知機能から理解することを目指すものである。 自己認識に関する行動を明らかにするために、初年度にチンパンジーが生活している屋外運動場壁面にカメラとモニタを設置した装置を利用して、ライブ映像として自身の姿を提示した。チンパンジーがカメラに接近しすぎると自身の姿を見ることができなくなり、離れると自己の全体像を見ることができる条件で、自発的に距離を広げて自己の全体像を見ることを好む個体がいることなどが明らかとなった。 他者理解のひとつである社会的同調を明らかにするため、同装置を用いて壁の反対側にいる別のチンパンジー(他者)映像を提示する条件を実施した。同じ装置に映し出される自己と他者の映像に対する行動の比較を通じて、自己理解の深さと他者理解の深さの関連について分析を進めている。 また、自身が置かれている空間の制限に対応する能力を調べるために、チンパンジーが自由に自動ドアを操作する場面を利用した。さらに、いつ、どこで、誰が操作したのかという情報を取り出すことができるように、チンパンジーでの虹彩認証について検討した。 さらに、野生チンパンジーを対象とした野外調査をギニア共和国ボッソウで実施している。現在10カ所にカメラトラップを設置し、盤根叩き行動の映像データを収集している。健常個体と腕に麻痺のある個体、筋肉の発達が異なる大人と子供とで比較をおこなう。
|