本研究は、ドラムの打叩動作について熟練者と非熟練者の比較を行うことにより、正確な打叩動作を成立させている機序を明らかにすることを目的としています。先行研究においては、打圧および手首の屈伸に関わる拮抗筋群の表面筋電など局所的なデータや、それらの位相の安定性などを検討するにとどまっています。しかし、巧みな目的動作の背後には、命令-実行結果を1対1とする制御機構ではなく、むしろ逆に多様な命令を繰り出し、命令-実行結果を多対1に調整するシステムが存在し、また局所ではなく全身の環境への定位が調整の基盤になっていると考えられます。本研究では、熟練者が、環境(撥、打面、床面)への身体の定位を調整しながら協応させることで、撥のダイナミクスを殺さず、撥の周期・強度をより安定なものにしていることを実証します。
平成28年度は、初年度に集録した実験データについて再帰性定量解析(RQA)をはじめさまざまな解析手法を用いて分析を進めました。また、残された実験についても、実験1、2の結果を踏まえて、適宜実験デザインを修正しながら進めていくべく、予備実験を重ねました。
成果の一部は、日本認知科学会(2016)にてポスター発表をし、ポスター発表賞を受賞しました。
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