本研究課題では、「正しい呼吸法」を行ったとき認知課題の成績が向上するかどうか、というデュアルタスクの確立と、それらの課題のfMRI計測による脳賦活領域の同定を目的とした。具体的には、1)課題正解率を向上させる呼吸の要素、パターンを見つけ出すこと、2)デュアルタスクを用いて、正解率を向上させる呼吸とそうでない自然呼吸を比較した際の課題遂行による脳賦活領域をfMRI計測より同定し、それらの賦活領域分布の違いを明らかにすること、3)呼吸位相に課題提示が同調させたときの課題正解率の違いを明らかにすることである。1)と3)に関して、健常者を用いた心理生理実験が示したことは、ある特定の呼吸位相を含んだときの記憶想起プロセスは、そうでないときの記憶想起プロセスと比べて、その課題の正解率を有意に低下させるという驚くべき結果を示した。またエンコーディングに関しても、課題正解率を低下させる特定な組み合わせが存在し、現在3報の論文としてまとめている。1報Revise中、1報投稿中、1報投稿準備中である。2)の正解率を向上させるような呼吸の効果については、呼吸が課題遂行に直接影響を及ぼすという報告がこれまでほとんどないという背景から、fMRI計測よりも心理生理実験による研究を優先的に行ってきた。1)や3)で示したように呼吸の課題遂行の効果が明らかになったため、fMRI計測による大脳皮質活動の研究についても、現在引き続き進行中である。
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