本研究は,高フレームレートかつ画素レベルの密度での距離画像計測を可能とするプロジェクタ・カメラシステムの実現を目的とするものである.研究当初は,DMD (Digital Micromirror Device) を内蔵する市販プロジェクタの投影光学系の後段に配置する光学系によってこれを実現するべく検討を進めたが,十分な精度が得られないことがわかり,研究期間を延長して再検討を進めてきた.本年度は,平成28年度に指針を得て開発に着手した新しい光学系について,その実装と評価を行った. 具体的には,市販プロジェクタ (Texas Instruments 製 DLP LightCrafter 4500) から照明光源を除去し,代わりにコリメートされた LED からの平行光で DMD を照明するようにした.また DMD と投影光学系の間にシリンドリカルレンズによる集光とホログラフィックフィルタによる拡散を行う光学系を挿入し,それを第二のシリンドリカルレンズで再度引き伸ばしてから投影光学系に導くシステム構成を取ることとした.この構成により,DMD 上に表示したバイナリパターンから安定した濃淡縞パターンの生成が可能であることを確認した.これにより DMD の更新レートでの濃淡縞投影が可能となり,高速カメラと組み合わせることで高速な3次元計測が実現できる. このプロジェクタシステムとカメラからなる計測システムを構成し,3ステップ位相シフト法を実装して平面を計測したところ,期待どおりに線形な位相が観測でき,また複数の空間波長パターンを投影・計測することによる位相接続も正しく動作することが確認できた.
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