研究課題/領域番号 |
15K12070
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
湯治 準一郎 熊本高等専門学校, 機械知能システム工学科, 准教授 (80332104)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サーミスタ / 人工皮膚感覚 / 触覚センサ |
研究実績の概要 |
平成29年度は,平成28年度の成果に基づき,サーミスタ素子の構造をそのまま利用し,素子周辺の媒質空間の変形を利用する静電容量変化方式の有効性を実験によって確認した.市販されている超薄型NTC型サーミスタ素子(10.0 kΩ@25 °C)と電極が直接水に触れるように先端をむき出しに加工し,それを高純度精製水(導電率1.0以下)で満たしたシリコンチューブ(外径3.8mm)内に挿入したものをセンサ素子とする.それを小型環境試験機内に設置し,シリコンチューブの外径とセンサ素子全体の温度を変化させながらサーミスタの抵抗および静電容量の周波数特性(100 Hz~1 MHz)を取得した.本実験では,サーミスタ素子が設置されている部分のシリコンチューブを1 mmずつ押し込む(チューブの外径を縮小させる)ことで接触力を与えたこととみなしている.実験結果より,サーミスタの抵抗は接触力の有無にはほぼ影響を受けずに変化しているのに対して,静電容量は,接触力によってシリコンチューブの外径が小さくなる(接触力は大きくなる)にしたがって,サーミスタ素子周囲の水分量が減少することから小さくなっている.周波数が約5 kHz以下では,静電容量と外径が比例の関係であり,それ以上の周波数範囲においては押し込み量が小さい範囲で飽和傾向が見られたため,測定周波数範囲は5 kHzより小さい範囲が良いことが明らかとなった.また温度が5°Cから35°Cの範囲では,静電容量は各接触力(各外径)において温度に比例して増加していることから,サーミスタの抵抗測定により接触力に依存しない温度を求め,その後に静電容量測定により各接触力を算出するという2段階の処理によって温度および接触力を得る可能性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
既存のサーミスタ素子の周囲に水分領域を設けた新しいセンサ素子を製作するための設計に時間を要したため,予定よりも遅れている.しかしながら,新しい手法の有効性を実験により確認でき,特許申請に繋げる必要があると考え,1年間の延長申請を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
更に詳細な実験を積み重ね,水分領域を有するサーミスタ素子の抵抗および静電容量測定から得られる2つの出力信号より,接触力と温度を出力する処理機構の実装を行い,ポリモーダル受容器の機能を具現化したセンサ素子の検証を行う.同時に特許出願に向けて準備を行い,出願が確定した後,学外発表,論文執筆を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の執行が少なく,実験に必要な消耗品の購入が予定より少なかったため残金が生じた.
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